ハイジャックに「営業時間外」で対応できず スイス空軍 どうしてそうなった?

WW2では連合国、枢軸国問わず、領空侵犯機に対して攻撃や撃墜もいとわなかった武装中立国スイスですが、21世紀のいま、特に空軍の凋落には著しいものがあり、ハイジャック事件にも対応できませんでした。現状とその背景を解説します。

どうしてこうなった? 背景に冷戦の終結 今後は…?

 もちろん2014年のエチオピア航空702便ハイジャック事件で露呈したような、営業時間外に対応できない空軍では中立国として問題があることも事実です。

 そうした理由もあり、前出の「航空警察24時計画」は2015年から開始され2020年現在、計画の進展によってスイス空軍の緊急発進待機は2シフト制となり午前6時から22時まで拡張され、「定休日」も無くなりました。2021年初頭までには3シフト制で24時間化される見込みです。

 しかしF-5E/Fは次期戦闘機が配備されないまま間もなく退役することから、空軍は「戦闘機は減るが緊急発進待機は拡大しなくてはならない」という、非常に厳しい運用を強いられます。

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山岳地帯の小さな航空基地マイリンゲンを離陸するF/A-18。スイスは国土が狭いうえ全土にわたり観光地と山が多く、戦闘機を運用する悪条件が揃っている(関 賢太郎撮影)。

 第2次世界大戦当時のスイス空軍は、相手がナチスドイツであろうとアメリカ・イギリスであろうと、中立国として領空侵犯機に厳しく対処し、時に交戦や撃墜することさえ珍しくはありませんでした。冷戦時は国産ジェット戦闘機の開発さえ主導し、冷戦末期の1990(平成2)年時点においては、戦闘機約300機を有する大国並みの空軍がありました。

 文字通りハリネズミ軍事国家だったスイスも、冷戦終結から30年が経過した現在、戦闘機保有数は10分の1にまで縮小され、空軍は「2機の戦闘機を15分以内に離陸させる体制を常時維持する」、それすらできるかできないかの瀬戸際に追い込まれています。

 主力機F/A-18も2025年頃には退役が始まるため、現在は「防空2030計画」として再び次世代戦闘機選定を行っており、2021年にユーロファイター、ラファール、F/A-18E/F、F-35のなかから選択する予定です。

 スイスの防衛費はGDP比0.7%、最低30機の戦闘機(+防空システム)を調達するにはGDP比0.8%まで大幅な防衛費増額が必要となります。軍拡に対する国民の反発を受けつつも、軍および政府はもはや次期戦闘機選定を中止にはできないとし、その必要性への支持を訴えています。

【了】

【写真】操縦士はパートタイマー スイス空軍のアクロバットチーム

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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