事故発生時 なぜ関係ない列車も止まるのか? 過去の教訓から学んだ「防護無線」とは
「危険を知らせる信号を受信した」とアナウンスが流れ、列車が停止することがあります。しかし事故は別の路線であることも。なぜ別の路線の列車まで停止するのでしょうか。この「防護無線」と呼ばれる信号の仕組みを見ていきます。
鉄道の危険 かつては「信号雷管」と「信号炎管」で
列車に乗っているとき、「危険を知らせる信号を受信した」という理由で列車が緊急停止することがあります。しばらくすると緊急停止した理由が放送で説明されますが、必ずしも同じ路線を走る列車から発せられた信号ではなく、別の路線で発せられた信号を受信して停止することもあります。なぜ関係のない路線まで停止させる必要があるのでしょうか。
「危険を知らせる信号」は、正式には「防護無線」と呼ばれる安全装置です。
レールの上を走る鉄道は、ブレーキをかけても急には止まれません。また自動車と異なり、進路を変えて衝突を避けることもできません。通常は信号保安装置などで前後の列車との間隔を保ち、衝突しないよう調整されていますが、たとえば列車が脱線して反対側の線路にはみ出すなどした場合は、対向列車と衝突し、多重事故が発生する危険があります。
そのため、事故が発生した場合は周辺の列車に危険を知らせ、直ちに停止させる必要があります。これを「列車防護」といいます。
防護無線が普及する以前は、事故が発生すると、乗務員が事故現場から800m離れたレール上に、列車の車輪が踏むことで爆音を発する「信号雷管」を置き、さらに乗務員が発煙筒のように光を発する「信号炎管」を手に持ち、ほかの列車へ停止の合図を送っていました。しかし、列車の本数が多い都市部では、緊急時にこのような列車防護を行う時間的な余裕がないという問題がありました。
東急田園都市線二子玉川駅での防護無線を東横線が受信して最徐行で運転した事があります。
多摩川に沿って遠くまで届いてしまったのでしょう。
このように難点もありますが、位置や路線情報を乗せるなど複雑な方式にすると故障が怖いので単純な方式にせざるを得ないのですね。