日本も病院船を持つべきか? そのメリット・デメリットとは

病院船を外交のツールに 災害対応に縛られないそのメリットとは

 こうした問題点を踏まえ、なおかつたとえば海上自衛隊が保有している艦艇のなかで手術設備や病床を備える「いずも」型護衛艦や「おおすみ」型輸送艦などを被災地に派遣して医療支援を提供すればいいのではないか、という意見もあって、病院船の整備は先送りされてきました。

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海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」。艦内に手術施設や病床を備える(画像:海上自衛隊)。

 それでも病院船には、ほかの艦艇には代替できない大きなメリットがあります。それが、外交のツールとしての活用です。

 近年、自衛隊は災害を想定した海外での訓練へ積極的に参加しています。たとえばハワイ近海で行われる「リムパック」や、アメリカとフィリピンの共同演習「カマンダグ」などです。そこで、病院船をこうした訓練に参加させたり、あるいは病院船を中心とした日本主導の多国間共同訓練を提唱したりすれば、日本の海外におけるプレゼンス(存在感)を大きく高めることにつながります。

 さらに、こうした活動を自衛隊の護衛艦や輸送艦ではなく病院船が行うことによって、たとえば南シナ海などで活動しても中国の反発を招きにくくする効果も考えられます。

 新型コロナウイルス対策で再び注目されはじめた病院船ですが、災害対応に縛られないメリットも踏まえつつ、議論が進められることになるかもしれません。

【了】

【写真】病院船「マーシー」の船内や訓練の様子

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Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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