今後の高速バス すいてる便ほど安くなるかも 導入進むか ダイナミック・プライシング

ダイナミック・プライシング真の目的 「満席で乗れない」を防ぐ

 2020年2月には、近鉄バスが5月乗車分から一部路線に「価格最適化サービス」を導入することが発表され、注目を集めました。しかしこれは、あくまでも「運賃カレンダーの決定プロセスをシステム化する」というもので、ダイナミック・プライシングを導入するわけではありません。同社が使用している座席管理システムも未対応のため、現時点では導入が不可能なのです。

 今後、多くの路線にダイナミック・プライシングが広がるかどうかは、座席管理システムの改修、またはほかのシステムへの乗り換えがどれだけ進むかにかかっています。

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近鉄バスの大阪~長崎線「オランダ号」。価格最適化サービスを試験導入する路線のひとつ(画像:近鉄バス)。

 またダイナミック・プライシングが目指すのは、収益性向上そのものではありません。たとえば、満席確実な便で運賃を高く設定するのは、前後の便へ予約を分散させ乗車率の平準化を図るとともに、「ほんとうにその便に乗りたい人」の予約をなるべく断らないようにすることが目的です。

 さらに、そこで生まれた新しい収益を、安全性、フリークエンシー(運行頻度)や適切な続行便(2号車以降)の設定、車両の快適性といった品質への投資に回し、沿線人口が減少するなか長いスパンで「路線を育て上げる」その足掛かりにすることこそ、ダイナミック・プライシング導入の本当のゴールであると筆者(成定竜一:高速バスマーケティング研究所代表)は考えます。

【了】

【運賃表】ウェブ決済が大幅に安い高速バス長野~新宿・池袋線

Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)

1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。

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