大規模災害時など「医療拠点になれる自衛艦」3選 「病院船」への変身は可能か否か
新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るっています。そのようななかで「病院船」の保有についての議論が再び活発化していますが、医療機能を充実させた自衛艦を病院船に転用できないのか、基本的なところを見てみます。
戦闘艦艇のため、同乗者の居住性は限定的
2020年3月現在、いまだ収束しそうにない新型コロナウイルスの大流行ですが、そのようななかで病院船の保有議論が起きています。
「病院船」とは、その名の通り、病院施設を備えた船のことですが、阪神淡路大震災以降に建造された海上自衛隊の艦船には、大規模災害時に民間人への医療提供を想定したものがいくつかあります。
それらは病院船に転用できないのでしょうか。構造的な部分から考えてみました。
おおすみ型輸送艦
おおすみ型輸送艦は、2020年3月現在、海上自衛隊が保有する「輸送艦」としては唯一のタイプで、3隻運用されています。艦のサイズは全長178m、基準排水量8900トンで、陸上自衛隊をはじめとする各種人員や車両、装備品などの輸送に用いられます。
PKOなどの国際貢献任務や大規模災害派遣に対応できるよう、積載量を増やす工夫を施しているのが特徴で、加えて艦内には応急治療が可能な医務室や手術室があります。また病床(ベッド数)は集中治療室の2床を含めて8床あるほか、完全武装の陸上自衛隊員約330名を収容できる同乗者用の居室も備えています
このほかにも、フラットな最上甲板に陸上自衛隊が装備する野外手術システムを設置できるよう改修を受けており、訓練もすでに行っています。ここには貨物コンテナを係止できるため、シェルターハウスなども状況に応じて設置できるでしょう。
しかし艦内は、車両をはじめとした各種装備品を効率よく積載できるよう、支柱や間仕切りを設けず空間を広くとっているため、感染者と非感染者、濃厚接触者などを区分けする大人数のゾーニングには向きません。また前述の同乗者用居室は3段ベッドで、民間人の長期収容には厳しいものがあります。
傭船されている民間のフェリーは帰宅困難者対策に使えるかもしれませんね。