EA-18G「グラウラー」が成功 「電子戦機」は有人・無人のハイブリッドになる?

日本が導入したい理由とそれにあたっての課題とは?

 EA-18Gはこれまでオーストラリアにしか輸出されていませんでしたが、近年ではフィンランド空軍の新戦闘機導入計画「HX」に、F/A-18E/Fと共に提案されているほか、ドイツに対しても、同国空軍が運用している電子戦機「トーネードECR」の後継機としての提案が見込まれています。

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EA-18Gの左右翼端と機体中央下に3つ吊られた、先端に風車のついたポッドが、電子戦機特有といえる戦術電波妨害装置(画像:アメリカ空軍)。

 日本でも北朝鮮による弾道ミサイルの脅威などが高まり、「ほかに有効な対抗手段が無い場合は、敵の攻撃の拠点となる『策源地』を攻撃することの是非」という、長年我が国で続く議論が改めて大きく取沙汰されて以降、複数のメディアにおいて、航空自衛隊がエスコートジャマーの導入を検討していると報じられています。

 2019年12月に策定された現在の「中期防衛力整備計画」には、結局エスコートジャマーの導入は盛り込まれませんでしたが、現在も政府内には電子戦機の導入を望む声は少なからず存在しており、もし導入するのであれば、EA-18Gが最も有力な候補となると考えられます。

 ただ、仮に策源地攻撃が国民から容認され、エスコートジャマーの導入が決定した場合、日本もエスコートジャマーの乗員の生存性をどのように高めていくかという課題に直面することになります。

 アメリカ海軍は、防衛装備品メーカーのレイセオンが開発した、航空機から発射されるデコイ(囮)の「MALD」に電子妨害機能を加えた「MALD-J」の配備を進めていますが、これには、貴重なEA-18Gを失うリスクを少しでも低くしたいという狙いもあるものと考えられています。

 EA-18Gの無人運用が実際に行なわれるのかは不透明ですが、今回のEA-18Gの実証実験は、有人機と無人機を組み合わせることで、乗員の生存性をより高めていくことが電子戦のトレンドとなることを決定付けたのではないかと筆者は思いますし、日本も今後、電子戦能力を高めていく上で、大いに参考にすべきなのではないかとも思います。

【了】

【写真】「グラウラー」の前任機「プラウラー」

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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