水上戦闘機なのにジェットで音速突破 アメリカ海軍F2Y「シーダート」 その目的とは?
海面コンディションの影響は、飛行機として致命的
初飛行から1年4か月後の1954(昭和29)年8月4日には、緩降下時の音速突破に成功したものの、開発時に想定していた、水平飛行で音速を越える最高速度マッハ1.5に到達することが、水上戦闘機としての構造上、難しいことが露呈しました。
また水上戦闘機である以上、波の状態で飛び立てるか否か、つまり、気象条件で運用を大きく制限されることが問題視され、超音速水上戦闘機の必要性に疑問符が付くまでになります。
そのようななか1954(昭和29)年11月4日、試作1号機がデモフライト中に空中分解を起こして墜落、テストパイロットは死亡という事故が起きました。これにより計画の大幅な見直しが始まります。
加えて同時期に、空母の構造に大きな影響を与える革新的発明が生まれました。それはスチーム(蒸気)カタパルトと、進行方向に対し斜めに設けられた着艦用のアングルドデッキです。それぞれの詳細は省きますが、これらの実用化によって、大柄なジェット艦載機であっても空母の発着艦が容易になりました。
またアメリカ海軍が、満載排水量6万トンを超える空母の建造を決断したことで、超音速水上戦闘機の必要性がなくなった結果、F2Yの開発は1956(昭和31)年に中止となりました。
ちなみにイギリスでも、太平洋戦争時の島しょ戦を戦訓にして、サンダース・ローSR.A/1ジェット戦闘飛行艇が開発されています。同機はF2Yよりもひと足早く1947(昭和22)年7月15日に初飛行していますが、やはり必要性に疑念が生じ、1951(昭和26)年に開発が中止されています。
【了】
Writer: 柘植優介(乗りものライター)
子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。
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