広がる自衛隊の女性起用 戦車の現場にも 陸自初の女性戦車小隊長が臨んだ極寒の訓練

初の女性戦車小隊長が臨んだ実戦想定の訓練とは…?

 今回取材した訓練は、敵味方に分かれ実戦を想定した内容で行われました。数多くの戦車や装甲車が演習場を広く使いながら駆け巡ります。そこに女性がいるということは関係ありません。

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中隊長からの指示を真剣に聞きメモする黒川3尉。中隊長は「勘が良い隊員ですので、今後に期待しています」と話す(矢作真弓撮影)。

 本来、戦車や火砲などは実弾を発射して敵を攻撃しますが、部隊対抗訓練で実弾を撃つわけにはいきません。そのため、戦車に搭載した専用の装置から赤外線を照射することによって、射撃のダメージを判定しています。

 この赤外線装置は、砲塔に発射装置、車体に受光装置が付いていて、敵を発見した戦車などが赤外線を照射し、命中すると受光部が反応して射撃を受けたことがわかるようになっています。

 黒川3尉が率いる戦車小隊は、最初の攻撃では敵に撃たれてしまったものの、その後の攻撃では大きく敵陣地を迂回してうまく敵を倒すことができたそうです。

 実は、黒川3尉の戦車小隊長デビューと同時に、同じ北恵庭駐屯地の第11戦車隊にも小隊長になった同期の女性が1名います。また2020年6月現在は、同じく第72戦車連隊、南恵庭駐屯地の第73戦車連隊および北千歳駐屯地の第71戦車連隊にも女性戦車小隊長が誕生しています。これまで女性が圧倒的に少なかった戦車部隊ですが、これからは女性の戦車操縦手、女性砲手などもたくさん誕生してくることになるでしょう。

 1両3名の乗員全員が女性という戦車の登場する日も、そう遠くないのかもしれません。

【了】

【写真】極寒の訓練に臨む黒川3尉とその小隊

Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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