新型コロナ禍が最初に訪れた貸切バス苦境 新たな道模索 もう「昭和の旅行」じゃダメだ

「新型コロナ前」はよかった? 貸切バス業はどう成り立ってきたのか

 たとえば、授業時間不足を補うため、今年度は遠足や修学旅行を縮小する学校が多そうです。「夏の甲子園」など大規模イベントも中止が相次いでいます。旅行会社のバスツアーの中心を占めていたシニア層は、感染リスクが大きいとされ、出控えるかもしれません。

 長期的な見通しも不透明です。そもそも日本は、団体旅行の市場が大きく、それが貸切バスの需要を支えていたわけですが、昭和の時代から引き継がれたその旅行スタイル自体に、新型コロナ以前から変革の必要性も指摘されていたからです。

 戦後、大手旅行会社らが、職場や町内会といった、「ムラ社会」日本ならではのコミュニティを対象に慰安旅行を売り込みました。まだ貧しかった当時の日本人には、貴重なレクリエーションとして喜ばれました。家族旅行や新婚旅行も、鉄道や航空、高速道路網が充実する前は、旅行会社が企画、募集するツアーに参加するのが現実的でした。

 高度経済成長を経て豊かになると、自家用車の普及もあって個人旅行が増加します。ところが、団体旅行市場も縮小はしませんでした。バブル経済最盛期の1990(平成2)年ごろには、会社の費用で宴会やゴルフを楽しむ、豪勢な社員旅行が目立ちました。

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銀座の免税店前で乗客を待つインバウンドツアーのバス。コロナ禍の前には既にピークを過ぎていた(成定竜一撮影)。

 2000(平成12)年には、バス事業における需給調整規制が撤廃され、貸切バスに新規参入が増加します。これにより、高止まりしていた貸切バス運賃(チャーター代)は下落し、手軽な格安バスツアーなど新しい市場を生み出しました。そして2006(平成18)年ごろからはインバウンドツアーの市場も拡大します。貸切バスの年間輸送人員は、規制緩和の前年(1999年)から15年間で約3割も増加しました。

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