新型コロナ禍が最初に訪れた貸切バス苦境 新たな道模索 もう「昭和の旅行」じゃダメだ
旅行会社も苦しかった「昭和の旅行」脱却なるか
新型コロナ危機が来る前から、変革の必要性は叫ばれてきました。通り一遍に有名観光地を巡るツアーに、旅行者は飽きています。その地域ならではの観光や体験を提供するためには、地域をよく知る地元の旅行会社とバス事業者が、現地集合のツアーを企画するのが一番です。
また、標準的な貸切バス車両の座席数が「45席」であるのは、小学校のクラス定員が40人であったことの名残りに過ぎません。少人数の学級が増えているいま、大人の利用も考えると、座席数を減らし、そのぶん広く豪華な座席やトイレ付き車両を望む声も少なくありません。
貸切バス事業者はかつて、「旅行会社が安い運賃を押し付けるから安全確保にお金が回らない」と、旅行会社を悪者にする主張を繰り返しました。しかし実際には、その旅行会社自身が低い利益率に苦しんでいました。彼らもまた、「ムラ社会」を基盤とした団体旅行の文化や、有名観光地を総花的に回るバスツアーといった「昭和の旅行」から脱却が求められていたにも関わらず、変化に挑戦するための体力を失っていたのです。
貸切バス事業者も、そのパートナーである旅行会社も、残念ではありますが新型コロナ危機に際して淘汰は避けられないと筆者(成定竜一:高速バスマーケティング研究所代表)は考えています。しかし、いやそれだからこそ、この危機を無事に潜り抜けられた会社には、あらためて消費者のニーズ変化と向き合い、新しい旅行スタイルを提案することが求められています。
【了】
Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)
1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。
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