線路がなくともタイヤで疾走 米陸軍開発の輸送車両「オーバーランドトレイン」の顛末

大型輸送ヘリの登場が「陸上列車」にとどめを刺した

 こうして1958(昭和33)年に完成したのがTC-497「オーバーランド トレイン」でした。TC-497は、構造的にはかなり凝っており、高出力のガスタービン発電機を搭載し、車両の操縦性を高めるために、牽引するトレーラー(貨物車)の各車も遠隔でステアリングするようになっていました。

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路上を走行するTC-497「オーバーランドトレイン」。後方のジープと比べると巨大さがよくわかる。

 また未開の地でも困らないよう、一部の車両には寝室やトイレ、キッチンまで備えられており、牽引能力が不足する場合には発電車を増設できるようにもなっていました。

 トレーラーもより多く、8両から12両つなげることが可能で、合計の最大積載量は150tあり、その状態で最大640kmを走破可能と、文字どおり貨物列車のような車両でした。

 しかし、完成したTC-497がアメリカ陸軍に採用されることはありませんでした。なぜなら、あまりにも凝った作りのため調達コストが跳ね上がってしまったからです。

 しかも同時期に重量物運搬用のヘリコプターが登場したことで、空輸の方が地形や障害物の影響を受けずに短時間で運べることから、アメリカ陸軍はヘリコプターを重用するようになり、TC-497に対する熱は一気に冷めていきました。

 こうして行き場を失ったTC-497は、民間に払い下げられることになりましたが、このような特殊車両を欲する民間企業はおらず、最終的にスクラップになりました。

 以後、ヘリコプターの輸送能力における急速な進化などもあり、このような特殊な運搬車両は作られていません。

【了】

【写真】軽戦車も運搬可 「空飛ぶクレーン車」と呼ばれた大型ヘリコプター

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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