「ニンジャ・ブレード」がシャキーンと展開 「暗殺」に特化したミサイルなぜできた?

極めて限定的な威力のR9Xが求められる理由

 無人機の主要兵装である「ヘルファイア」ミサイルは、そのほかの爆弾やミサイルの威力に比べ比較的、弱いものですが、それでも標的以外への被害を考慮すると、人口密集地で使うことは困難です。

 またその射程は最大で10km程度であり、距離によっては数十秒程度、飛翔しますから、荒野ならともかく市街地では発射から着弾のあいだに民間人が殺傷範囲に入ってしまうことも考えられます。

 こうした点において、殺傷半径が極めて限定されたR9Xならば、そのリスクを最低限に抑えることができるという利点があります。

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近年は直撃が期待できるため市街地でも使いやすい「弱い」兵装の需要が増している。SDB(小直径爆弾)と大型の「ペイブウェイ」爆弾を搭載したF-15E(関 賢太郎撮影)。

 自由な政治運動や表現が保障されているアメリカにおいては、関係のない民間人を巻き込むような作戦は大々的に批判報道されてしまいます。ロシアやシリアが実際にやっているような、民間の病院であろうと戦略爆撃機で容赦なく破壊してしまうような無法は、アメリカにおいては国民が許しませんし、また人権意識がある(少なくとも配慮しようとする)からこそ、一部そうではない国に対し人権問題を外交カードとして使うことができるのです。

 そうしたことから、「ドローン(無人機)」「スマート・ボム(頭の良い爆弾)」「サージカル・ストライク(外科手術的除去)」といった用語を使って「戦争をきれいに見せたい」アメリカ政府が、民間人への被害を最低限に抑えるという、軍事よりも政治的な必要性から「使いやすい兵器」を求めた結果、R9Xは開発されたのです。

【了】

【写真】ベクトル真逆な破壊力 すべての爆弾の母「MOAB(モアブ)」

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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