東武はなぜ夜行列車を走らせるのか 100km台でも根強い需要 歴史は戦前から

短距離でも夜行ならではの強み

 尾瀬や日光といったエリアのレジャーにおいては、夜行ならではの強みがあると東武の担当者は話します。そのひとつが、ハイキングにおける「縦走」のニーズです。

 福島県側から尾瀬へ入り、群馬県や新潟県へ抜けるといったコースは、クルマでは実現できず、現地の交通機関が連携してこそ可能だといいます。尾瀬周辺の山々では、登山口の周辺で駐車場所の争奪戦のような状況も見られるとのこと。夜行列車で仮眠をとりつつ早朝から行動し、現地の足や山での滞在時間を確保できる、というメリットを求める人が多いそうです。

 逆に冬のスキー列車は、縦走や回遊といった要素はありません。しかしながら、雪道運転の不安もなく、気軽にスキー場へ行けるのは、列車ならではだといいます。

 ただ、こうした気軽さゆえに、「尾瀬夜行」は「日帰り」「一度行った」というイメージが強くなり過ぎた面もあるそう。このため近年は、尾瀬周辺の山々や、群馬県側へ抜けるPRに力を入れているそうです。2020年には、バスと奥只見湖遊覧船を乗り継いで、会津高原尾瀬口駅から新潟県の浦佐へ公共交通だけで抜けるという、「登山しない尾瀬横断ルート」の商品も組み込まれました。

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早朝の会津高原尾瀬口駅に停まる500系「尾瀬夜行」(画像:東武鉄道)。

 各シーズンの夜行列車に向け、現地の自治体、交通機関、スキー場、観光協会などと連携し、半年くらい前から準備に取り掛かるといいます。ただ「いちばん泣かされるのは、『自然』」(東武の担当者)。台風や豪雨、また2019年度冬は雪不足に見舞われるなど、夜行列車も運休せざるを得ないケースが多々あるようです。

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