突如明かされた米空軍の新戦闘機 ウワサの「デジタル・センチュリーシリーズ」か?
「デジタル・センチュリーシリーズ」は戦闘機開発を一変させるか
また、現代の戦闘機の運用寿命はおおむね30年程度に設定されていますが、アメリカ空軍は運用開始から15年を経過したあたりから、維持費が毎年3%から7%程度、上昇しているとの統計を発表しています(もちろん、これはアメリカ空軍に限った話ではありません)。加えて、戦闘機の能力の相対的な低下を防ぐために行なわれる近代化改修の経費も、大きなものになっています。
デジタル・センチュリーシリーズの開発費や機体の製造費は、従来の戦闘機に比べて高くなると見積もられているものの、16年程度で退役させることにより、維持費と近代化改修費が低減できることから、従来の手法で開発、製造された戦闘機を30年運用するよりも10%程度、総経費が低減できるとも見積もられており、ローパー次官補はこれをふたつ目の利点として挙げています。
さらに、デジタル・センチュリーシリーズはデジタル設計技術と、3Dプリンターなどの最新の製造技術を用いるため、これまで戦闘機の開発、製造を行なってこなかった企業の新規参入が容易になります。ロケットや宇宙船の開発と打ち上げを行なうスペースXや、電気自動車の開発、製造を行なうテスラを率いるイーロン・マスク氏のようなベンチャー企業家にも戦闘機への参入の機会を与えることで、健全な競争ができることを、ローパー次官補は3つ目の利点として挙げています。
とはいえ、デジタル・センチュリーシリーズのコンセプトが本当に採用されるのかはまだ不透明です。ただ、F-15やF-35などのアメリカ空軍の主力戦闘機を導入し、F-2戦闘機を後継する「次期戦闘機」を従来の手法で開発を進めている航空自衛隊にとっては、今後の推移がかなり気になるところなのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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