ベーコンエッグと空の戦いの深~い関係 イギリス空軍での第2次大戦時の習わしとは

日本と同じく四周を海で囲まれた島国のイギリスは、2度の世界大戦ともドイツ軍の潜水艦によって海運が滞った経験を持っています。その影響は兵士の食べ物にも。ゆえにベーコンエッグが特別な意味を持つようになったそうです。

食べられるのは航空機クルーだけ 命がけの戦闘の代名詞

 ところがイギリス空軍では、これから命がけの出撃をする航空機クルーのために、特別メニューとして、入手難の新鮮な殻付き卵とベーコンを使ったベーコンエッグを供します。あるいは、命からがらの空の死闘から無事に生還した航空機クルーのためにふるまうこともしたそう。いずれにしろ、命がけの代償は、入手難でなかなか食べられる機会がなくなっていたかつてのポピュラーメニュー、ベーコンエッグなのでした。

 それは映画にも描かれています。第2次世界大戦中の実話をもとに作られた、イギリス空軍爆撃機部隊の活躍を描いた映画『The Dam Busters(邦題:暁の出撃)』では、士官食堂(オフィサーズ・メス)で働くイギリス空軍の女性補助部隊員が、席に着いた第617飛行中隊のギブソン中佐(主人公)に次のように尋ねるシーンがあります。

「今夜、出撃ですか?」。

 大戦中の慣習を知らないと、なぜ彼女がこの質問を主人公にしたのかわからないでしょうが、実はこのシーン、頷く彼の食卓にはベーコンエッグが配膳されます。これこそ、前出の命がけの出撃の前の一皿なのです。件の女性補助部隊員は、主人公に質問することでどの食べ物を出せばよいのかを確認したのでした。

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1943年2月、出撃から無事帰還し、食堂でベーコンエッグを食べるイギリス空軍第57飛行中隊のアブロ「ランカスター」爆撃機のクルー(画像:帝国戦争博物館/IWM)。

 ちなみに、日本ではフライパンで先にベーコンを焼いて豚脂を染み出させ、そのベーコンの上に卵を落として「ベーコンを敷いた目玉焼」にしたベーコンエッグも見受けられますが、イギリスでは、まずベーコンだけ焼いて豚脂を染み出させると、一旦ベーコンを取り出し豚脂だけで卵を焼き、ひとつの皿にベーコンと目玉焼を別々に盛り付けるスタイルのベーコンエッグが主流とのこと。

 そのため、ベーコンと卵がつながったベーコンエッグを想像していると、実はイギリスの航空機クルーが食べていたものとはスタイルが異なります。

【了】

【写真】戦士の休息 ベーコンエッグに舌鼓打つイギリス空軍兵士

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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