戦艦「武蔵」建造を支えた「給兵艦」とは? その名は「樫野」 運んだのはあの46cm砲!

戦艦「武蔵」は長崎で建造されましたが、その巨大な主砲は呉で造られ、そして計画当初、長崎へ運ぶ手段がありませんでした。というわけで専用の運搬船「樫野」が建造されることに。日本海軍の歴史を陰で支えたとあるフネのお話です。

空前絶後の巨大艦砲 造るのはいいがどう運ぶ?

 給兵艦「樫野」の任務は、ずばり大和型戦艦の46cm砲塔の輸送です。大和型戦艦は1番艦「大和」が呉海軍工廠、2番艦「武蔵」が三菱重工業長崎造船所、3番艦「信濃」が横須賀海軍工廠、4番艦(111号艦)が呉海軍工廠で建造されることになりましたが、46cm主砲は呉で製造されていたため、各工廠に輸送する必要がありました。

 しかし、砲身重量1門165t、砲塔の総重量は2510tにもなる46cm砲を運べる船が存在しないことが分かったのです。もしこの段階で輸送手段が無いことに気が付かなければ、「武蔵」の運命は大きく変わっていたかもしれません。

 そこで「大和」「武蔵」建造を決めた1937(昭和12)年度の第三次補充計画、通称「マル三計画」において、ついでに主砲輸送専用船も新造してしまうことにしたのです。「仮称第55号艦」として、計画書に盛り込んでしまいます。数回しか使わないことが分かっていましたので、既存民間船を使うことも検討されましたが、機密保持の観点からわざわざ専用運送艦を造ることにしたともいわれます。

「マル三計画」により、1937(昭和12)年11月4日に1番艦「大和」、1938(昭和13)年3月29日に2番艦「武蔵」が起工されます。第55号艦「樫野」も1939(昭和14)年7月1日、三菱重工業長崎造船所で起工し、翌1940(昭和15)年7月10日には竣工します。

「樫野」は「給兵艦」と呼称されていますが、実際には重量物運搬船でした。3つの船倉があり、最前部の一番ハッチは砲身用、二番ハッチは装甲鋼鈑、三番ハッチは主砲塔用とされました。三番ハッチは砲塔旋回部を積載するため、直径16mと艦幅(19.9m)に対して非常に広く、船体強度を確保するため船体断面は上部が外側に捲れた様な形状をしていました。また万一、事故などで沈没した場合、主砲が運べず「武蔵」や「信濃」の建造に重大な影響が出るため二重船底とするなど、船体の安全設計には特に留意されました。

【写真】全体写真が残存しない「樫野」の貴重なショット

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