ホントに飛んだの!? 「ビア樽」と呼ばれた短足寸胴機 イタリアの「スティパ・カプロニ」

戦前、プロペラ駆動のレシプロ機から次世代のジェット機への進化の過程では、新たな理論に基づいて様々な試作機が各国で開発されました。そうした中、イタリアでも特異な形状の試作機が空を飛んだのでした。

「ビア樽」ミラノの空を飛ぶ

 1932(昭和7)年に完成した試作機(MM.187号機)は、そのユーモラスな形状から「空飛ぶ樽」や「空飛ぶ桶」と呼ばれます。

 同年10月7日にタリエド工場で初飛行を行い、そののちイタリア空軍が首都ローマ近郊のモンテチェリオ飛行場でテストしました。本機は外観形状こそ特異でしたが、飛行は非常に安定性が高かったとのこと。なぜなら、このダクト式胴体の翼形状に似た断面が高揚力を生んだからで、なおかつ着陸速度も68km/hと低く、着陸距離も180mと短いものでした。

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冗談のようなプロポーションで試験飛行を行うスティパ・カプロニ機の後期試作タイプ(吉川和篤所蔵)。

 しかし胴体が中空とはいえ、機体サイズに比してエンジンが120馬力では明らかに性能不足であり、期待していた最高速度はわずか133km/h止まりでした。そこで高速化を目指して新たに双発から四発機まで計画されたものの、イタリア空軍省は資金難を理由に計画の凍結を決定、これにより世界に先駆けイタリアで生まれたユニークな実験機の開発は終わりを告げたのでした。

 それでもスティパ技師が情熱を注いだ理論と実験機は、世界各国で興味を持って迎えられ、フランスやアメリカ、ソ連の航空雑誌で未来の飛行機として紹介されます。のちにこのダクテッドファンのアイデアは、その後のジェットエンジン開発の萌芽となったのですから、スティパ技師の実験機開発は決して無駄ではなかったといえるでしょう。

 なお2001(平成13)年には、有志によりオーストラリアで3分の2サイズの機体が復元され、飛行に成功しています。

【了】

【写真】エンジンカウル? 胴体? 不思議な位置にある「ビア樽」のエンジン

Writer:

1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「九七式中戦車写真集」や「イタリアの中戦車・重戦車写真集 」、「イタリア軍写真集」など。

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