「はかた号」はかくて「キングオブ夜行バス」になった 何度も荒波乗り越えた30年
順風満帆ではなかった「はかた号」 過去に廃止の危機も?
こうして誕生した「はかた号」は、多くのマスコミに取り上げられたこともあり、平日でも予約が取りにくいほどの人気路線に。繁忙期には続行便を含め最大12台で運行したこともありました。
しかしながら、その後は決して順風満帆な道のりではありませんでした。
最大の危機は、1998(平成10)年9月のスカイマークエアラインズ(現・スカイマーク)羽田~福岡線の就航であったといわれています。スカイマークは片道普通運賃を当時の大手航空3社(日本航空、全日空、日本エアシステム)の半額となる1万3700円に設定したため、大手航空3社は「特割」などの割引運賃でこれに追随。航空運賃が「はかた号」の片道普通運賃を下回り、結果として「はかた号」の利用者数は減少することになるのです。
この航空運賃値下げやバブル経済崩壊による景気の冷え込み、バス会社側の人件費高騰などの影響で、1999年(平成11)年1月には京王が共同運行から撤退。一時は路線自体の廃止が検討されたこともありました。
また、2003(平成15)年8月には、中国道の上り線で「はかた号」2台と大型トラック5台、乗用車2台が絡む多重衝突事故が発生し、多数の死傷者が出たほか、2010年前後の旧高速ツアーバスの台頭やLCCの就航など、周辺環境は厳しさを増していきます。
そのような中でも、運行会社の西鉄は、東京~福岡間夜行バスの定期運行という、いわば「日本最難関の安全運行」に絶え間ない努力を続けていきます。
「水曜どうでしょう」の恩恵を存分に受けた路線。