なぜ不動産会社が鉄道を? ユーカリが丘線の「山万」バスにも進出 その大いなる野望

なぜ鉄道に並行して路線バス? その影にある変化

 山万のバス路線、ユーカリが丘コミュニティバス「こあらバス」は、2020年11月7日(土)に本格的な運行を開始します。もともと2013年から断続的に試験運行を続けていた路線を再編する形で、2016年に開業した商業施設「イオンタウンユーカリが丘」などを中心とした5系統で運行されます。

 新規の事業参入となる路線バスが登場した背景には、普通の住民サービスにとどまらない、山万の先を見据えた配慮がありました。

 もともと「すべての住宅が駅から10分以内」という強みを持っていたユーカリが丘にも、駅から数百m離れた区画が存在します。高齢者や乳幼児のいる家庭など、さまざまな年代が同じ街に住むなかで、バスは駅から遠い地域と、イオンなどの商業施設、コミュニティセンターがあるエリアなどをカバーする役目を果たします。また、介護老人保険施設やケアハウス、特別養護老人ホーム(すべて山万経営)などが集中するエリアに足を運びやすくなるのも、住民には嬉しいところでしょう。

 つまり、ユーカリが丘駅前から「イオン」などの商業施設へ、遠くの会社から近くの施設へと、街の移動の変化や目的の多様化に合わせて、今回の路線バス運行が始まったというわけです。

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ユーカリが丘駅南口に到着するバス「ここらら1号」。撮影時点で実証運行のためか、バス停の表示がなかった(2020年9月、宮武和多哉撮影)。

 そしてこのバス路線では、ジョルダンの決済チケット管理機能「Jorudan Style Point &Pass」や、パナソニックの認証技術を応用した「顔パス決済乗車」の実証実験が行われます。乗車ごとにスマートフォンを取り出す必要すらない乗車を実現すると同時に、移動データを蓄積し、将来的(2030年頃目標)には鉄道駅へ接続する「オンデマンド乗合タクシー」や、多客にも対応できる「連節式コミュニティバス」の運行につなげるとのこと。

 今後もさまざまな試みが行われると推測されますが、山万は過去いち早く、環境負荷の少ない電気バスの実証実験を行っており、社会実験の段階でその車両を導入済みです。このほかニュータウン内には電気自動車のカーシェアリングや電動バイクの充電設備も多くあります。今回のコミュニティバスによって、「二次交通」(鉄道などに接続する小規模の交通手段)の選択肢はさらに充実してきたと言えるでしょう。

【地図】珍しい「ラケット型」路線 ユーカリが丘線とニュータウンの位置

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コメント

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4件のコメント

  1. バス画像のキャプションがバス「亭」になってますよ? なにか食べ物屋さんですかね……。

    • ご指摘ありがとうございます。訂正いたしました。

  2. 山万がそうした先進的な企業であるならば、ユーカリが丘線の車両の耐用年限が訪れたとき必ずしも新交通システムという形態で残すとは限らないという含みでしょうよね、路線バスに参入したということは。車両には冷房がついていないのですよね? 

    不動産屋が鉄道を、というと旧目黒蒲田電鉄を思い浮かべましたが、あれは田園都市㈱とは別会社だから除外ですかね。

  3. 山万の取り組みは、先見性があり参考になりますが、このユーカリが丘線の車両に冷房装置が無いという有名な話があります。
    温暖化で夏場は酷暑が当たり前の首都圏では、サービスレベルが低すぎると思います。