災害で唯一の九州横断路「豊肥本線」は今 「あそぼーい!」はただの観光列車ではない
ダークツーリズムとしての「あそぼーい!」 移動手段というより…
こうした災害や、ほかには戦争などの被害を追体験し、後世に残す観光様式を「ダークツーリズム」と呼びますが、「あそぼーい!」はまさにこれを地で行く観光列車と言えます。アナウンスにはありませんでしたが、熊本地震で路盤が崩落し、再建されたと思われる区間では線路の砂利が白くなり、枕木も新しいものに置き換わっています。いたるところで災害の爪痕を感じられます。観光列車に乗りつつも、日本がいかに自然災害大国であるかを考えさせられるという点で、「あそぼーい!」は非常に意義深い列車であると言えるでしょう。
乗り通して筆者が率直に感じたことは、「あそぼーい!」を移動手段として考えると時間がかかりすぎるのではないかという点です。「あそぼーい!」は別府駅から熊本駅までの160.1kmを走りますが、3時間17分かかります。停車時間も含めた列車の平均時速を表す表定速度に換算すると、約48.8km/hです。これは観光列車だからゆっくり走っているというわけではなく、通常の「九州横断特急」でも変わりません。
理由として地形的な要因があります。列車は阿蘇の外輪山の東側を越えて「阿蘇谷」と呼ばれる世界最大級のカルデラを走り抜け、今度はさらに外輪山の西側を越えて海に面する都市に降りて行きます。一連のあいだには標高差がありますが、これは鉄道においては特に不利で、熊本側では列車を折り返してジグザグに移動する「スイッチバック」が行われます。そのため時間がかかるのです。
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