完成するもコロナ禍で就航できぬJR九州対LCCの切り札「トリマラン」特例で運航開始へ
「トリマラン」が獲得した「別のメリット」 これまでの「ビートル」は「移動手段」
「クイーンビートル」がその構造で獲得した「別のメリット」について、まず、かんたんにいうと横に並べた“3つの胴”の上に板を置いて、その上に客室を設けるような形であるため、客室などを大きくとれることが挙げられます。
実際に乗ってみると、3階建ての船内には座席(ビジネスクラス、普通席)のほか、免税店、パウダールーム、授乳室、キッズルーム、自転車専用スペースや専用ロッカー、展望サロン、屋上のサンデッキなど、充実の設備。船旅が持つ楽しさのひとつである「船内散策」が、味わえるようになっています。
従来のジェットフォイル「ビートル」では、船の規模的にも、そしてジェットフォイルにはシートベルト着用義務がある点からも、できないことです。
「クイーンビートル」のデザインを担当したのは、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」なども手がけている水戸岡鋭治さん(ドーンデザイン研究所)。「いままでの『ビートル』は移動手段でしたが、『クイーンビートル』は豊かな時間と空間を提供できます」と、水戸岡さんは話します。
トリマランの「クイーンビートル」は、座席数もジェットフォイルの「ビートル」と比較し2倍以上の502名。「高速船から客船に生まれ変わる」というコンセプトで、開発したそうです。
トリマランは、一般的な船(単胴船)とくらべ構造が複雑で高コストであるなど、またジェットフォイルと比べ速度で劣るといったデメリットがありますが、一定の速さと、「客船」として乗客を楽しませられる船内の広さ、シートベルト不要というメリットがあります。ジェットフォイルではできなかった夜間航行も可能――利便性の高いダイヤ設定が可能です。
また、特に横揺れに強いこともトリマランの特徴です。残念ながら今回の試乗は湾内の低速航行であったため、本来の実力は測りかねますが、とても安定した印象でした。
新たな構造を採用したことにより、もう大型海洋生物とは衝突しないことを願います。