実現へ前進「富士山LRT」 5合目が近すぎちゃってどうしよう? 「冬も富士観光」課題も

なぜ「電気バス」でなくてLRT? そもそも運賃は妥当?

 往復1万円という料金は、素案で比較対象となっていたスイスのユングフラウヨッホ鉄道(日本円換算で往復2万円以上。ただし頂上まで到達する)や、日本の「立山・黒部アルペンルート」(信濃大町駅~立山駅間で片道9820円)と比較すれば、そこまで高いものではないでしょう。ただ、料金設定によっては静岡県側の須走口、御殿場口などの混雑にもつながりかねません。静岡県側との協調や、季節による割引などの導入も考えられます。

 一方で、2020年現在の日本は、新型コロナウイルスの影響で観光全体が痛手を負っています。かつては自社での登山鉄道を模索していた富士急行も現在は投資ができる状況ではなく、富士吉田市も慎重な姿勢を崩していません。環境への対策はいずれ必要となりますが、「富士登山鉄道構想」は急がずじっくり検討せざるを得ないのではないでしょうか。

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5合目に立つ富士スバルライン開通記念碑(宮武和多哉撮影)。

 ちなみに、環境負荷の低減だけであれば、LRTを建設せず、現在のバスを排ガスのない電気バスに置き換える手法も考えられますが、坂道が続くスバルラインでは、登坂の負荷でバッテリーの発熱があるとして、検討の対象外でした。また、LRT車両(定員120名)と遜色ない輸送力も必要とされています。

 今回発表された素案では、明確な開通時期は示されず、雪害に対する対策費用、LRT車両を製造するメーカーなど、詳細を詰めるべき問題は山積しています。今後、仮にバッテリー性能や輸送力の条件が合う電動バスが発売されれば、すぐ検討してもよいのではないでしょうか。

 いずれにせよ、環境負荷が少ない交通機関で、5合目が「近すぎちゃってどうしよう♪」を実現できるか、今後が注目されます。

【了】

【画像】壮大! 「富士スバルラインに路面電車」のイメージ

Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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コメント

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6件のコメント

  1. どうしたらこの自然をさらに破壊する計画を断念させることができますかね?続けるならイコモスが富士山(と三保の松原)の世界遺産認定を取消しかねませんよ?

    • 別にええんちゃう?
      世界遺産取り消されても自業自得って事で。

  2. 富士スバルラインの廃止は出来ればやめて欲しい…
    五合目まで結ぶのはロープウェイとか索道の建設ではダメなのですかね…?

    • キモは自家用車の排除なのだからスバルラインを潰すことが大前提であって、
      ロープウェーor索道は論外でしょ。移動手段を増やしてどうすんのさ。
      専用道にしてBRT&連節バスとかで良いと思うけどね。

  3. せっかく鉄道化するのなら、来場者過多を予防するためにも762mmゲージを採用しましょう。

  4. 実現を願っています。道路交通に頼りすぎる状況を打破して