わずか1.4度でも「きつい坂」 上り下りが苦手な鉄道の苦労と工夫

鉄のレールと車輪によって走る鉄道。その弱点は「勾配」です。坂を上り下りする鉄道は、昔もいまも様々な工夫で克服しながらその場所を行き来しています。

箱根の4.6度の勾配は「規格外」

 鉄道は、基本的に鉄の車輪が鉄のレールの上を走りますが、そのとき車輪とレールが接している面積は直径1cm程度の楕円ほどしかありません。自動車の、はがき1枚分ほどの接触面積と比べると微々たるもので、摩擦力も小さくなってしまいます。

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箱根登山鉄道の80‰勾配。角度にするとわずか4.6度だが、鉄道にとっては破格の急勾配となる(児山 計撮影)。

 摩擦力が小さいと、モーターの力を大きくして力任せに登坂しようとしても力がレールに伝わらず空転してしまいます。そのため急な勾配は鉄道にとって難所となります。

 日本の鉄道は原則として1000m進むと25mの高さを上る25‰(パーミル)を限度とし、それよりきつい勾配はあくまでもやむを得ない区間として設計されていました。25‰は角度にすると約1.4度です。分度器で見ると1.4度はほとんど平らのように感じるかもしれませんが、鉄道にとってはこの程度の勾配でも距離があると十分「難所」となるのです。

 ちなみに箱根登山鉄道は、1000m進むと80m登坂する80‰という急勾配を進みますが、これを角度に直すと約4.6度。「こんな坂で急勾配?」と思ってしまいますが、鉄道にとっては「規格外の急勾配」です。

 これ以上の勾配となると、2本のレールのあいだにギザギザした特殊な「ラックレール」を敷いて車両の歯車とかみ合わせて登坂する方式や、山上に動力を配置してロープで車両を上げ下げするケーブルカーのような方式を採用せざるを得ませんが、速度や輸送力は通常の鉄道に比べて小さくなってしまいます。

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コメント

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3件のコメント

  1. 土地によっては軸重制限があったりで全てに動輪を配置できない車種は車も同じでしょうかね?
    鉄道の軸重分布は精度が高いと思いますが、自動車の世界はアホな分布公式が蔓延していて嘆かわしいかぎりです。
    ですから出荷された実物が書面通りか?否か?などは国が民間に丸投げした完成検査のイカサマと世を走る車が車検証通りでないことで明白になってますよね
    安定傾斜角度が許容内に収まってるはずの緊急自動車が横転してみたり、これらは全て製造完成車の段階で実測検査をせずに計算上の数値を提出して合格に導いてるだけの堕落と、法人検査の手間を省くために事前に提出された書類審査当で後の本検査を通してしまう双方の堕落の負の賜物なんですね。
    でも交通の現場は嘘はつかないので如何に生きてる人間に過失を押し付けようが真実は頭をもたげてくるのですが、相変わらず臭いものに蓋ですから悲しいかぎりです。
    夜を徹しての保安検査、鉄は生き物と言い切る職の拘りに物の進化が加わればこそ鉄道に限らず安全な乗り物と言えるでしょうね
    また鉄道が勾配における粘着運転と同時にリニア式や回生ブレーキを取り入れていく中で、今はアホな代替え需要におんぶにダッコの車の世界もそろそろ現実見ていかないとローンその他で焦げ付いちゃうんじゃないでしょうかね?

  2. 都電では天候や道路の条件により砂を撒いてたはずです
    砂撒き器も付いています

  3. 昔パーミルをよくわかってなかった頃は、碓氷峠の66.7パーミルの勾配がすごいすごいと言われていたのを、そのまま「そんなにすごい坂があるのか」と思っていたものですが、パーミルを千分率と知り、1000m先で66.7m上がっていると聞くとすごいけど1m(1000mm)先で約7cm(66.7mm)上がっているだけだと気づいたとき、案外大した事ないんだなと思ったのと同時に、その程度でも鉄道にとっては急坂なんだと驚いたのを思い出しました。