交通手段は丸ごと定額 店舗は「移動産」に 三井不動産の新構想で街はどう変わる?

なぜ不動産が「移動」をやるのか

 不動産は言葉のとおり「動かない」商品を扱っていますが、今回は「動く」領域の取り組みを始めるとのこと。なぜ不動産が今モビリティに着目するのか――その答えは「生活のボーダーレス化」にありました。

 三井不動産ビジネスイノベーション推進部の須永 尚部長は「生活は家、仕事は職場、買い物は店……といった場所・空間の概念や使い方が、コロナ禍を契機にボーダーレス化しています」と記者説明会で話します。

 例えば生活だと多拠点生活や、仕事と生活を合わせたワーケーションが認知され、仕事の場もカフェやシェアオフィス、自宅など選択肢が増えていることが挙げられます。このような暮らし方や働き方の多様化、ライフスタイルの変化が加速していることを踏まえ、「不動産」と「移動」を組み合わせた新たな体験価値を提供するといいます。

 MaaSも、その体験価値を生み出すものの一つです。「移動の自由」を用意することで、街全体の魅力を底上げする狙いがあります。住民にとっては「どこで・何をするか」をより能動的に選べる生活になると説明しています。

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MaaSのカーシェアで使われるクルマの例(2020年12月15日、乗りものニュース編集部撮影)。

 実証実験は、柏の葉が2021年1月末まで、「都心型」の日本橋は12月15日(火)から2021年3月末まで、「準都心型」の豊洲は12月21日(月)から2021年3月末までの予定で、それぞれ指定のマンション住民を対象に行われます。

 人が移動するMaaSとともに、モノ・サービスが移動する「移動商業」の実証実験も並行して実施されます。飲食をはじめ、マッサージや靴磨きといったサービス、そして物販の事業者に店舗用の自動車を貸し、売れる曜日・時間・場所を調整することで収益を効率的に伸ばすことを狙います。

 同社は「移動式サービスによる不動産の移動産化」と表現し、ビジネスイノベーション推進部の後藤遼一主事は「従来“動かない床”を貸してきたが、今回はいわば“動く床”を貸す」と説明。車両リースと出店料で収益を確保しつつ、住民・客には「思いがけない店舗(コンテンツ)との出会いを創出したい」と事業の意図や狙いを話しています。

【了】

【画像】移動手段を一括する「MaaS」とは?

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