新型空母も「ワンオペ」か 不経済極まりない空母1隻体制をフランスがやめられないワケ
フランスにおける「核戦略の要」としての空母運用
フランスが空母を手放さないもうひとつの理由は、同国の核戦略にあります。
アメリカやロシアは大陸間弾道弾(ICBM)、原子力潜水艦発射型弾道ミサイル、戦略爆撃機の3つの手段、いわゆる「核のトライアド」によって核兵器を維持していますが、フランスはICBMを保有しておらず、戦略爆撃機も2005(平成17)年にダッソー ミラージュⅣが退役して以降は保有していません。
アメリカ海軍は冷戦終結後に空母への核兵器の搭載をとりやめており、大型空母を保有している他国でも核兵器の搭載は確認されていませんが、フランスは大規模な戦争が勃発した際、核兵器による反撃能力の冗長性を確保するため、「シャルル・ド・ゴール」艦載戦闘機であるラファールMに搭載できる核弾頭搭載型空中発射巡航ミサイル「ASMP」を搭載しています。
フランスはASMPの射程延伸型「ASMP-A」の開発も進めており、ASMP-Aは2020年12月10日(木)に、ラファール機からの初の発射テストに成功しています。ASMP-Aの開発を進めているところなどから見て、フランスは空母を核戦略の構成要素から外す考えはないようですが、そのことが1隻だけの空母に、他国の空母にはない「価値」を与えているともいえます。
フランスはインド太平洋地域でのプレゼンス強化を進めており、「シャルル・ド・ゴール」が東シナ海方面まで進出してくる可能性も取りざたされています。同艦が長期に渡ってインド太平洋地域に展開する場合、乗員の休養や補給などで日本に寄港を求めてくることも考えられますが、日本には核兵器を作らない、持たない、「持ち込ませない」という「非核三原則」が存在しており、核兵器の投射能力というフランスの空母だけが持つ「価値」が、日本への寄港を難しいものにしているのも、また事実です。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
ワンオペの空母運用をするなら、基本的には訓練状態での最低限の運用で維持して、整備期間を短縮する。有事に即応はできないが、旧植民地などでの政治情勢が悪化した時などに、一時的に訓練から実戦状態に運用レベルを上げて対応することは、ある程度のタイムラグは発生するが可能です。
英国海軍のツーオペ空母も、これに近い状態で運用にされています。
2隻のうち1隻は常に予備役(ビジー)状態で、整備と訓練を一体化している。就役しているもう一隻とローテーションで交代することで、空母1隻は常に稼働状態を維持している。
一番呑気なのは海自の潜水艦。
ドック入り→基本訓練(新人受け入れ)→実戦訓練→実働を、4年のサイクルで繰り返しているから、実際には1/4(25%)しか稼働していないことが、事故の海難審判で明らかになりました…