B-25はいかに「死神」だったか 毎分7700発の機関銃モンスターと化した「襲撃機モデル」
最終モデルでは12.7mm重機関銃を18挺も搭載
一方、75mm砲を積まずに12.7mm重機関銃の数を増やしたJ型も開発されます。このタイプは重機関銃を18挺も装備しており、そのうち尾部銃座2挺、胴体後部の左右各1挺ずつを抜かした14挺を前方に指向することができました(上部回転銃座2挺含む)。J型は単純計算で14挺×550発=毎分7700発もの機関銃弾を前に向けて斉射できる能力を備えていることになります。
エンジンを1発しか積んでいない戦闘機や艦上攻撃機などの単発機と比べて、エンジンが2発あり、機体サイズも段違いに大きい陸上爆撃機であれば、爆弾やロケット弾を数多く積めるのと同様、機関銃弾も大量に積みこむことができました。
太平洋戦争後半、護衛の戦闘機もつかず、有力な対空火器も備えていない日本の輸送船団にとって、B-25低空襲撃機による攻撃は、こちらが沈むまで何度も襲い掛かってくる「死神」のような存在だったのではないでしょうか。
戦争を扱ったドキュメンタリー番組などでは、太平洋戦争中の記録映像として、周囲の海面が機関銃掃射の水柱で包まれた日本の小型輸送船のシーンが使われることがあります。これは、まさしくB-25低空襲撃機のガンカメラが捉えた映像なのです。まさにあれこそ、低空襲撃の恐怖を示す証拠といえるでしょう。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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