「蒼空の真珠」か「ビア樽」か 南北で真逆の評価だった米戦闘機 本名「バッファロー」

アメリカ製の兵器は、第2次世界大戦においてツンドラ地帯からジャングル、砂漠、絶海の孤島まで至る所で使われました。そうしたなか、太平洋地域と北欧で評価が真逆だった戦闘機があります。双方でどう捉えられていたのか見てみます。

「南の戦場」とは評価が一変した「北の戦場」

 第2次世界大戦時、大国ソ連に領土の割譲を迫られ、祖国を守って必死に戦っていたフィンランドは、世界各国から様々な兵器を入手していましたが、その中のひとつに「バッファロー」がありました。同国に引き渡された数はわずか44機。

 しかし、質量ともに勝るソ連機を相手に、約21対1という高いキルレシオ(撃墜比率)を叩き出します。これはつまり、フィンランド軍の「バッファロー」1機が撃墜されるまでに、ソ連機を約21機も撃墜していることを意味しています。これにより「バッファロー」パイロットからは、30人を超えるエースが誕生したとも伝えられます。

 このような訳で、日本軍パイロットからは「ビア樽」と嘲られたバッファローですが、フィンランドでは評価は一転し、「蒼空の真珠」(タイバーン・ヘルミ)というカッコいいあだ名で呼ばれました。とはいっても、やはり同国でも「ビア樽」(ビールケグ)のあだ名で呼ばれることも。評価は真逆ながら、外観で想起されるものは「南の戦場」でも「北の戦場」でも、どうやら同じだったようです。

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敵であるソ連軍に見つからないよう飛行場脇の林の中に隠されているフィンランド軍のF2A「バッファロー」戦闘機(画像:SA-kuva)。

 なおフィンランドでは、前述のように「バッファロー」の機数が限られ、部品などは貴重だったので、ソ連軍エリアに不時着した本機も、あきらめることなく陸軍部隊を敵陣の奥深くに突入させて回収してきたこともあったといいます。

 また、これほど高い評価を「バッファロー」に与えていたフィンランドは、何とか国産化できないかと、鹵獲(ろかく)したソ連製エンジンを搭載し、主翼などを木製化したコピー機ともいうべき機体まで開発しています。同機は「LVフム」と名付けられましたが、予定の性能が発揮できず、試作のみで終わりました。

 ここまで評価が真逆な戦闘機というのもそうそう存在しません。その点、このF2A「バッファロー」戦闘機は、ある意味、航空史に名を残す機体といえるのかもしれません。

【了】

【写真】こんな国産機あった? 日の丸描いた「バッファロー」

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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