鉄道高架橋が事務所や住居に… 名古屋「南方貨物線」の奇景 国鉄の一大未成線
名古屋市南部の住宅地の一画に、車両がまったく走っていない鉄道の高架橋が点々と続いています。民間に売却されて住宅、倉庫、ゴルフの打ちっ放しなど様々に活用されている「南方貨物線」。その、運に見放された歴史をたどります。
高架線の上に住宅や倉庫……それは国鉄の未成線
名古屋駅の南方5kmほど、名古屋市南区や熱田区、港区の住宅街には、コンクリートの高架橋が遠くから目を引くほどにそびえ立っているところがあります。この高架、ところどころで途切れているほか、高架上も鉄道車両やクルマが走っている気配がまったくありません。
この高架橋は、旧国鉄の「南方(なんぽう)貨物線」として建設されたものです。大府駅から東海道本線に並行し、笠寺駅で西へ分岐したのち、あおなみ線沿い名古屋貨物ターミナル駅(名古屋市中川区)を目指した路線でした。しかし、完成を目前に控えていたものの、高架上を列車が走ることは一度もないまま、計画そのものが中止に追い込まれました。
その後、本来の役割を果たせなかった鉄道高架橋は土地ごと払い下げられ、いまや実に様々な形で活用されています。
「高架下を駐車場として貸し出し」「高架下にすっぽり住宅」のほか、階段が設置されている場所で「高架の上に住宅や倉庫」という見晴らしが良さそうな物件もいくつかあります。また途切れた高架をすっぽり覆うように建物を建てた「高架を屋根代わりにしているオフィスビル」、なかには「高架上に緑色のネットを張ってゴルフの練習場」としたケースも。
もともと国鉄清算事業団から、法人向けにのみ高架橋の一部売却が行われていましたが、現在は不動産会社の手に渡って「高架橋ごと賃貸もしくは販売」物件として、ごく稀に一般市場に出回るのだそうです。
橋桁と橋桁の間は大型バス1台分の停車にちょうど良いようで、「高架下に設けられた高速バス事業者の営業所」では、大型バスが規則正しく停車しています。コンクリートで固められた四角いスペースに何台ものバスがピタリと停車しているさまは、まるで丁寧に組み込まれたおもちゃのブロックを見ているかのようです。
また貨物線はいくつかの鉄道や道路との立体交差が予定されており、たとえば名鉄常滑線の豊田本町~道徳間の両側には、これを跨ぎ越そうとして途切れた高架橋が残っています。
愛知環状鉄道の黒字は下駄を履かせた結果ではないでしょうね?
昨今の情勢では「山梨県駅」からそのあたりまで最長の未成線ができやしないかと危惧しています…