国内空港「凄テク着陸」はどこで実施? ANAパイロットに聞く 超レアなものも…
「VOR-A」の着陸はどこがポイント?
羽田空港で実施される珍しい着陸進入「VOR-A」はJR蘇我駅(千葉市)から西の東京湾沖合へ12~13kmあたりの「DARKS」というポイントから始まり、東京湾上空を西に向かって羽田空港に近づいていく飛行コースです。進入のポイントは、「滑走路が見えた後にいかに着陸に向けて旋回していくか」だそうです。
「一般的な飛び方としては、西に向かって空港に近づいたのちに右へ60度ほど旋回し『ダウンウィンド』と呼ばれるC滑走路と並行に飛ぶルートに入ります。そののちお台場の南側あたりで180度旋回して滑走路16Lに正対し、着陸することになります」(ANAのパイロット)
このダウンウィンド以降の飛び方は「場周経路と呼ばれて訓練で基本となる飛び方」とのことから、パイロットにとっては慣れた飛び方といえそうですが、いわゆる“腕の見せ所”となるのは、その前の段階とのこと。
「このダウンウィンドに入る部分では空域が限られていて、ダウンウィンドへのエントリーが計画していた位置とズレてしまうと、その後に飛行コースを修正する空間の余裕がありません。すると、その後の場周経路の飛び方がしっかりとできなくなるので、その意味で技術が必要です。この飛び方は、DME(地上から距離情報を出している施設)の数字がいくつになったら旋回開始するのか、ダウンウィンドで正面にどの地上物標が見えれば適正な位置なのか、などの事前計算や準備が重要となってきます」(ANAのパイロット)
なお、D滑走路が供用開始される2010(平成22)年まで羽田空港では、VOR-C(ブイオーアール・チャーリー)アプローチという進入方式で16Lへの着陸というのがありました。お台場の南側にある埋立地に向かって北西向きで近づき、最後は城南島付近を左旋回しながら16Lに着陸する方法で、これは「羽田カーブ」とも呼ばれる名物でした。
ANAのパイロットによると「羽田カーブ」と先述のVOR-Aは「最後の1~2分間は同じような経路を飛んで着陸する」という共通点があるといいます。ただし、「羽田カーブ」は実施頻度も高く、1500フィート(約460m)からの最終降下の経路や高度処理の目安がおおむね確立されていたことなどから、現在のVOR-Aの方がより技術が求められるのでは……と話します。
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