対戦車砲弾を叩き落とす! 戦車を守る「アクティブ防御システム」の歴史と現状

対戦車弾 もう耐えられないなら撃ち落とそう!

 ここまで述べてきたように、「装甲を厚くして耐える」というのは受動的(パッシブ)対応といえますが、一方で飛んでくる対戦車弾に対し戦車から迎撃弾を発射して装甲に当たる前に撃ち落とそうという、「アクティブ防御システム(APS)」というアイデアがあります。歴史は意外と古く、旧ソ連が「ドロースト」というAPSを1977(昭和52)年に登場させています。

「ドロースト」は、ドップラーレーダー(反射波の波長で、対象の相対的な速度と移動の変位量を検出できるレーダーのこと)で飛んで来る対戦車弾を探知し、コンピューター制御でタイミングを測って迎撃弾を発射、飛来する弾を破壊するために重量3gの破片を散乱させます。レーダー装置、迎撃弾ランチャー、発射管制装置など大がかりなシステムが必要でした。

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アフガニスタン軍によるPRG-7の実射。後方にも激しいバックブラストを発生させる(画像:アメリカ海兵隊)。

 アフガニスタンの実戦では、迎撃率80%とされ効果が認められたものの、対戦車砲弾の飛来を感知すると自動で迎撃弾が発射され至近でさく裂するため、戦車自身は無事でも周囲の味方に少なくない副次被害を出してしまいました。しかも対戦車弾を警戒してレーダー波は出しっぱなしとなり、戦場ではとても目立ってしまいます。実際、APSは扱いにくく、ソ連も他国も導入に積極的ではありませんでした。

 しかし、最近では戦闘の様相は大きく変化し、イラクでのアメリカ軍は行動中、仕掛け爆弾の起爆を妨害する電波を常時発し、歩兵も装甲車内に籠るようになっており、すなわちAPSの使用環境は整ってきました。そうしたことから、特に装甲を厚くできない装甲車の防御力強化策として、昨今、APSが注目されています。

【写真】中国製APS炸裂の瞬間を連続写真で解説 ほか

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