対戦車砲弾を叩き落とす! 戦車を守る「アクティブ防御システム」の歴史と現状

APSは使いものになるのか 対抗策もすでに…?

 こうした状況を受けた、いわば昨今の戦場に合わせたAPSとしていち早く実用化しているのが、イスラエルの「トロフィー」、ロシアの「アフガニート」などです。イスラエル製APSはアメリカ陸軍もトライアルを実施しています。

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「トロフィー」APS。(上)飛来する対戦車ミサイルをレーダーで検知(中)追尾し迎撃タイミングを算出、乗員に警告(下)迎撃弾を発射(画像:ラファエル)。

「トロフィー」の有効性は確認されましたが、レーダーや制御コンピューターを作動させるには大量の電力が必要で、システム自体が重くてかさばります。大型の戦車には装備できますが、小型の装甲車には容量が足りません。重くなりすぎた装甲から脱却しようというのに、APS自体が重くかさ張っているという矛盾です。

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ロシアのT-14戦車に搭載されている「アフガニート」APS(ロシア国防省画像を月刊PANZER編集部にて加工)。

 日本は、周囲への副次的被害からAPSには消極的だといわれていましたが、現在、防衛装備庁が独自システムを研究しています。迎撃弾を、破片方式ではなく大きな風船のような膨張体方式で迎撃できないか、など、独自のアイデアもあります。もっとも国内事情的に、実際に採用されるかは分かりません。システムを軽量化し、迎撃弾の副次被害をいかに局限するかは、まだ試行錯誤が続いているのが実情です。

 一方、対戦車弾もただ撃ち落とされるわけにはいきません。ロシアはオトリのロケット弾を発射してAPSを誤作動させた直後に本物の対戦車ロケット弾を発射するという、二段構えの対戦車ロケットランチャーRPG-30を2012(平成24)年から配備しています。盾と矛のシーソーゲームは、100年どころか永遠に終わりそうにありません。

【了】

【写真】中国製APS炸裂の瞬間を連続写真で解説 ほか

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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