安い!速い!イタリアン「豆戦車」 作りまくったら戦争で足かせに
第1次大戦が終わり、世界が軍縮モードに覆われると、兵器も安価でコスパのいいものがもてはやされる風潮になります。そこにイタリアは目を付け安価な「豆戦車」を開発、大ヒットして大量生産されますが、これが次の大戦でアダとなりました。
軍縮の時代が生んだコスパ優秀な新兵器
第1次世界大戦で初めて戦場に登場した戦車は、塹壕戦で膠着した前線を突破するために用いられました。そのため、当初は大型で鈍重な陸上戦艦的な存在でしたが、大戦後半、小型で回転式砲塔を装備し機動性に優れたフランスのルノーFT軽戦車が登場したことで、各国の戦車開発はそれまでの鈍重で大型のものから、小型で機動性に優れたものにシフトしていきます。
ところが第1次世界大戦後、緊張の緩和から世界情勢は軍縮に向かい始め、戦車開発も停滞するようになります。そのようななか、イギリスでトラクター製造を行っていたカーデンロイド社は、1920年代後半に履帯(いわゆるキャタピラ)式の牽引車を元に超小型の戦車を開発しました。
全長約2.5m、全幅約1.7m、重量約1.5tというコンパクトな車体に、出力は40馬力のエンジンを搭載、ふたり乗りで武装は機関銃1丁のみという、戦車というにはあまりにも小柄なものでした。ただ、小型かつ安価でありつつ、移動式銃座や偵察車両としては有用なため、世界中に輸出されてベストセラーになり、「タンケッテ」(豆戦車)という新たなジャンルを築きます。ちなみに日本も、旧陸海軍の双方が購入しています。
そうした時流のなかで、第1次世界大戦後の戦車開発に出遅れていたイタリア陸軍も1929(昭和4)年にカーデンロイド社製の豆戦車21輌を輸入し、さらに4輌は部品を輸入して国内で組み立てます。イタリア陸軍はこの豆戦車を「Carro Veloce:カルロ・ベローチェ」29型として採用しました。
ちなみに「カルロ・ベローチェ」とはイタリア語で「快速戦車」という意味です。また頭文字のCVから、「CV29」とも呼ばれました。
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