米「航行の自由作戦」対馬海峡での対象国は日本…なぜ? 同盟国相手でも実施するワケ

アメリカによる「航行の自由作戦」は、南シナ海などの様子を見ると「強引な権利主張に対する正当なる鉄槌」といったイメージかもしれませんが、実はその鉄槌、日本相手にも振りかざされていました。そもそもどういう作戦なのでしょうか。

日本の主張の何が問題?

 ところで、アメリカは日本のどのような主張に対して航行の自由作戦を実施したのでしょうか。今回の航行の自由作戦に関するアメリカ第7艦隊の報道発表には、その具体的な理由は示されていませんが、これまでアメリカは一貫して日本の「基線」の引き方を問題視してきたため、今回もそれが原因となっていると思われます。

「基線」とは、簡単にいうと領海などを設定する際の基準線のことで、これには海岸の低潮線(干潮時の海岸線)を採用する「通常基線」と、海岸の至近距離にある島々を結ぶ、あるいは屈曲した海岸線の両端などを結ぶ「直線基線」というふたつの種類があります。アメリカが問題にしているのはこのうちの直線基線の引き方で、日本は過剰な直線基線を採用していると主張しているのです。今回の場合は、九州北部、あるいは対馬における直線基線が問題視されたと考えられます。

Large 20210423 01
日本の領海などに関する概念図。外国との境界が未画定の海域における地理的中間線を含め便宜上図示したもの(画像:海上保安庁)。

 基線の外側には領海、接続水域、排他的経済水域という形で沿岸国のさまざまな権利が認められる海域が設定可能です。この内、とくに「領海」では、他国船舶に対して一定の要件の下で領海内の通航が許される「無害通航権」が認められる一方で、その上空は「領空」となるため、他国の航空機による領域国の許可を得ずしての上空通過は認められません。さらに基線の内側は「内水」となり、ここでは無害通航権すら認められません。

 このように、基線の引き方によっては、各国が自由に使える公海の幅が大きく狭まってしまうため、アメリカはこうした主張には非常に敏感なのです。

【了】

【画像】日本が主張する対馬海峡周辺の「基線」「領海」

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号
  3. 飛行中の「日の丸特別機」に粋なサプライズ! 天皇皇后両陛下を“最新ステルス戦闘機”がお出迎え
  4. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  5. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 「“再有料化”でいいから4車線化して」→普通車280円になって1年 利用者負担で勝ち取った“効果”あきらかに 八木山バイパス