国内防衛産業の再編加速か 三井E&S造船の事業整理 苦境の造船再編だけで済まない理由

商船の建造も終了する三井玉野造船所

 三井E&S造船は、2018年度から2021年度まで毎年2隻の建造が計画されている、もがみ型護衛艦の建造に三菱重工業の下請けという形で参加し、2020年11月19日に、もがみ型の2番艦「くまの」を進水させています。

 こうしたなか結ばれた事業譲渡契約の概要はこうです。玉野艦船工場の土地建物などは引き続き三井E&S造船が所有し、現在約700名が勤務する同工場の職員のうち約400名は、艦艇や官公庁船事業を継承する新会社へ転籍し、三菱重工業による新会社の買収完了後も引き続き玉野艦船工場で勤務します。

 さらに同社は、2021年度予算に建造費が計上された、もがみ型護衛艦8番艦の建造を三菱重工業からの下請けで建造する計画となっていましたが、三菱重工業への艦艇・官公庁船事業の売却により、もがみ型の8番艦は三菱重工業の子会社となる、前に述べた新会社が、玉野艦船工場で建造することになると見られています。

 一方で、三井E&S造船は4月23日(金)に、中堅造船企業である常石造船と資本提携に合意しています。2021年夏に三井E&S造船は玉野における商船の建造を終了し、今後商船の受注を得た場合は、常石造船の海外工場か、三井物産と中国の造船大手企業である揚子江船業と共同設立した合弁企の造船所YAMICで建造する方針を明らかにしています。

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三井E&S造船が建造した海上自衛隊の音響測定艦「あき」。同社の海上自衛隊向け受注は「あき」のような支援艦艇が多く、商船低迷の穴埋めにはならなかった(写真:海上自衛隊)。

 艦艇・官公庁船事業の三菱重工業への譲渡と、商船事業における常石造船との資本提携により、三井E&S造船は今後、温室効果ガスの排出量が少ない次世代船などの開発などに注力し、企業としての生き残りを図っていくことになります。

 一連の三井E&S造船における艦艇・船舶建造からの撤退は外国企業との競争激化が大きな要因となっていますが、実のところ防衛産業も同じ構造を抱えています。

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