エアバスA320と瓜二つの少し残念な兄? 12機のみ製造の「メルキュール」 打倒737のはずが

残念な「メルキュール」の顛末 でも弟分「A320」が737に倍返し!

 これらの設計を施したメルキュールは、結果的に後のエアバスA320とよく似た見た目となったものの、販売はA320のようにはいきませんでした。オイルショックなどの影響をうけ、わずか12機の生産にとどまり、商業的な成功とは程遠い結果に終わってしまいます。

 また、エンジンを初期型で採用したプラット・アンド・ホイットニーのJT8D-15から、より低燃費・低騒音のCFMインターナショナルCFM56にパワーアップした派生型、メルキュール200を、ダグラスなどアメリカのメーカーと協同で計画しますが、実現には至りませんでした。

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ジェットスター・ジャパンのエアバスA320(乗りものニュース編集部撮影)。

 なお、ほぼ同時期にはヨーロッパが一丸となり、ジェット旅客機市場を独占していたアメリカに対抗すべくエアバス社が300人クラスのワイドボディ旅客機A300を開発。このA300はメルキュールのデビューと同年の1974年に就航し、そこそこの成功を納め、時を同じくしてエアバスは発展型である短胴型A310に着手していました。

 このほかヨーロッパでは、1970年頃から、ドイツとスペインの航空機メーカー数社において、EUROPLANE(ユーロプレーン)という短距離用ジェット旅客機が計画され、これがJOINT EUROPEAN TRNASPORT(JET)に発展。これが名機、エアバスA320の始まりです。

 エアバスA320は機体の外観こそメルキュールに似ているものの、旅客機として世界初となる電気信号を用いた操縦システム「フライ・バイ・ワイヤ」の搭載をはじめとする、革新的な技術がふんだんに取り入れられています。

 メルキュールは販売の面では「トホホ旅客機」とはなったものの、A320の売れ行きはまさに飛ぶ鳥を落とす勢い。メルキュールがなしえなかった胴体延長派生型のA321も開発され、737をはじめアメリカが優勢だった150席クラス旅客機市場の歴史を塗り替えました。まさにメルキュールの借りを、A320が返したわけです。

 ちなみに、メルキュールの実機は、現在もヨーロッパ内の航空博物館に展示されています。筆者も過去に、ル・ブルージェ航空宇宙博物館で見かけた記憶が残っています。

【了】

【エアバスA320と見比べ!】「メルキュール」の全容とは

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コメント

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2件のコメント

  1. メルキュールが他の機材より勝っているのは、事故喪失率が0%という事だけ。
    この記録は永遠に破られないだろう。
    今後この記録を破る見込みがあるのは、今のところA380、A350とA220、B787だけだね。

    • >事故喪失率0%
      日本のP-2Jという誇らしい記録が!!
      あれは民間機ではありませんが。
      機首のスマートさはさすがのフランス製と感じます。