「南アルプストンネル」へ行ってみた リニア中央新幹線 建設工事の注目ポイント

ずっと上り坂だったり…締まったいい山だったり…色々「意外」だった

 いよいよ、南アルプストンネル広河原非常口の斜坑へ入ります。現在、全長約4.1kmのうち、3.3kmを掘削済みだそうです。

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広河原非常口の斜坑。坂道の上から下へ向けて撮影(2021年5月12日、恵 知仁撮影)。

 入って意外だったのが、ずっと上り坂だったこと。坑口の標高は650mで、切羽(掘削の最先端)の標高は900mといいます。

 考えてみれば、標高3000m級の山脈を貫く南アルプストンネルは、トンネル自体も標高の高い地中を通過させないと、トンネルの長さ、土かぶり(地表までの距離)がとても大きくなり、工事が困難になるなどするわけです。「トンネルは下のほうにある」という先入観がありました。

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広河原非常口斜坑の土かぶり量を表した図(2021年5月12日、恵 知仁撮影)。

 ワンボックスカーで斜坑に入って13分ほどで、坑口から約3.3km、標高約900mの切羽に到着。地表の標高は約1700m、土かぶりは約800mだそうですが、担当者によると、この「地下800m」で湧水がほとんどないことに驚いたそうです。

 この斜坑の湧水は、坑口で毎分0.4t。トンネル工事的には「ない」とできる量で、途中、200m程度の土かぶりで川の下を通過しても、水が出なかったとのこと。

「トンネル工事は掘ってみないと分からない」とも言われますが、広河原非常口の斜坑では粘板岩など非常に地質が固く、「締まったいい山」だそうです。ちなみにこの粘板岩を使った硯が、この山梨県早川町の特産品(雨畑硯)になっています。

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掘削で出た粘板岩(2021年5月12日、恵 知仁撮影)。

 この粘板岩の塊(30cm×20cm×8cmぐらい)を持ってみましたが、見た目以上に重いのにも驚きました。写真中央の粘板岩を片手で持ち上げようとしたら、持ち上がらないどころか、手首が死にそうになりました。

 また驚いたといえば、切羽でワンボックスカーから降りると、涼やかな風が吹いていたことも意外でした。坑口にあった送風設備の効果、明らかです。送風管の直径は2mあるそうです。

【写真】南アトンネル掘削で「爆破!」した直後の様子 現れた「数千万年前の地層」

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コメント

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4件のコメント

  1. ここまでトンネルの建設が進んでいるのに、静岡県のせいでリニア自体の建設が中止になってしまったら、本当にどうするのでしょうね…?

    • 静岡県としても法的に認められた権限で拒否してるのだから工事の進捗など知ったこっちゃないでしょうね。

      少なくとも国として何かあったときに責任逃れをするために都道府県に権限を与えてきた(許可したのは県なので国は知らないと言い逃れする)のが裏目にでているわけですし。
      もし国策だというなら何かあったときに国が全額補償するような立法でもしないとおさまらないでしょう。
      (結果的に影響ないなら補償いらないわけですし)
      まあ都合のいいときだけ民間事業だと言うのでしょうが…

    • >何かあったとき
      中部電力や東京電力におもねる知事のせいで今も大井川から失われ続けている水量に比べれば
      桁外れに少ないリスクですね。

  2. ひよっとしたら地下水は問題ではないかもしれない。ただ、例えば来冬は東電管内などで電力の逼迫が予想されるくらいなのに、電気を新幹線の3倍食うリニアは妥当なのか。出張の需要も元に戻るか疑問だし、品川名古屋間にリニアができたからってその間の利用者が大幅に増えたりするだろうか。
     災害時の迂回ルートになると聞いて静観していたが、富士山大噴火には明かり区間をすべてシェルターで覆って対処するとでも?