「南アルプストンネル」へ行ってみた リニア中央新幹線 建設工事の注目ポイント

待っていた「フルオートジャンボ」 そして震えるポケット

 斜坑の切羽には、「フルオートジャンボ」という機械が待っていました。掘削にあたり、正面の岩盤に100か所の小さな穴(直径45mm)をあけ、そこにダイナマイトを設置、発破をかけるという流れなのですが、その小さな穴を、データを入力すれば自動であけてくれる最新鋭のマシンなのだそうです。

 1回の発破で約100kgの爆薬を使い、1.2m掘削できるとのこと。1日に3回から4回発破するため、掘削速度は1日4mほどになります。

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最新鋭の「フルオートジャンボ」。側壁のリボンはプリズムの存在位置を示す(2021年5月12日、恵 知仁撮影)。

 掘削工法は「NATM(新オーストリアトンネル工法)」で、「山を観察しながら状況を見て掘る工法」とも担当者は言います。掘削されたトンネルには10mごとに5か所、プリズムを設置し、それを使ってミリ単位で、トンネルの挙動を観察。状況によって壁の厚みを増したり、岩盤とコンクリートを固定するロックボルトを増やしたりします。

 広河原非常口の斜坑掘削は、残り約800m。これをあと約1年かけて掘ったあと、そこから超電導リニアが500km/hで走る本線トンネルなどが掘られます。

 なおJR東海によると、南アルプストンネルの着工済み工区(山梨と長野)では、着実に工事が進んでいるそうです(山梨工区の早川非常口では本線トンネルの掘削も進行中)。

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付近で南アルプストンネルの工事が行われている内河内川の谷間の道。写真は行きの際のもの(2021年5月12日、恵 知仁撮影)。

 取材を終え、斜坑の外へ出て、ふたたび秘境的な雰囲気が漂う内河内川の谷間の道を帰ります。その静けさのすぐ裏側で、南アルプスを貫く世紀の大工事が進んでいました。

 ふと、ポケットが震えます。スマホに大量のメールが着信していました。

【了】

【写真】南アトンネル掘削で「爆破!」した直後の様子 現れた「数千万年前の地層」

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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コメント

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4件のコメント

  1. ここまでトンネルの建設が進んでいるのに、静岡県のせいでリニア自体の建設が中止になってしまったら、本当にどうするのでしょうね…?

    • 静岡県としても法的に認められた権限で拒否してるのだから工事の進捗など知ったこっちゃないでしょうね。

      少なくとも国として何かあったときに責任逃れをするために都道府県に権限を与えてきた(許可したのは県なので国は知らないと言い逃れする)のが裏目にでているわけですし。
      もし国策だというなら何かあったときに国が全額補償するような立法でもしないとおさまらないでしょう。
      (結果的に影響ないなら補償いらないわけですし)
      まあ都合のいいときだけ民間事業だと言うのでしょうが…

    • >何かあったとき
      中部電力や東京電力におもねる知事のせいで今も大井川から失われ続けている水量に比べれば
      桁外れに少ないリスクですね。

  2. ひよっとしたら地下水は問題ではないかもしれない。ただ、例えば来冬は東電管内などで電力の逼迫が予想されるくらいなのに、電気を新幹線の3倍食うリニアは妥当なのか。出張の需要も元に戻るか疑問だし、品川名古屋間にリニアができたからってその間の利用者が大幅に増えたりするだろうか。
     災害時の迂回ルートになると聞いて静観していたが、富士山大噴火には明かり区間をすべてシェルターで覆って対処するとでも?