羽田空港着陸進入 実は30パターン以上もあった! ANA操縦士に聞く職人技あれこれ

バラエティありすぎの着陸進入 滑走路ごとにどう使い分け?

 羽田空港の着陸進入方法について、先出のANAのパイロットは次のように代表的な運用を紹介してくれました。

おもに冬に実施されることの多い、A、C滑走路に南側から進入するケース

「南北に伸びる2本の滑走路に南側から進入する34L、34R滑走路へは、基本的にILS アプローチで着陸します。また、第2ターミナル側の34R滑走路にはビジュアルアプローチ(視認進入。管制官がレーダー画面を見ながら空港の方向に飛行機を誘導し、そこからはパイロットの裁量で飛んで滑走路までたどり着く)にいくつかの特別な条件が付加された「チャーテッド・ビジュアルアプローチ」、第1ターミナル側の34L滑走路にはVORアプローチも設定されています」

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羽田空港の滑走路配置(画像:国土地理院)。

おもに夏に実施されることの多いB、D滑走路の北東から進入するケース

「22、23滑走路はLDAアプローチが基本となります。ただしLDAアプローチは電波を射出する施設の位置や精度の関係上、気象条件がある程度良いことが求められることから、基準を下回る天候のときはILSアプローチになります。そのほか、沖合につくられた23滑走路は、RNP-ARアプローチも設定されています」

※ ※ ※

 なお、2020年からは「羽田新ルート」として、A、C滑走路の北側、16L、16R滑走路に都心上空を経由して着陸する方式が、南風で午後の一部時間帯に限り、設定されています。

 東京都心を縦断する「羽田新ルート」の運用も今や定着した感はありますが、16L、16R滑走路への進入のなかには、実施の機会がめったにない珍しいものも。

「23滑走路が深夜に週1回程度、点検のため閉鎖になる日があります。その日に南寄りの風が吹いていると、16L滑走路にVOR アプローチで近づいたのち、途中から周回するように進入する『サークリングアプローチ』という方法をとります。これは「VOR-A」という名称で呼ばれています。実施の機会も少ないということもあり、羽田空港では、もっとも高い技術が求められる進入方法かもしれません」

 滑走路1本、しかもひとつの着陸進入方式をとっても、「ワンパターン」ではない状況に日夜対応していることが、パイロット、それをコントロールする航空管制官など、運航に携わるプロフェッショナルのスキルの高さが伺えるエピソードともいえるしょう。

【了】

【図でさっと見る】羽田空港着陸時の滑走路4本の使い方

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コメント

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1件のコメント

  1. 滑走路が3本しかない時代は、南風時では殆どが16Lのサークリングで降りてましたね。

    ただ最近では慣れて無いパイロットが多いのか、ピーチが目の前に見えた23に降りかけたり、外航機がコースを外れて風力発電所に当たりかけたりしたみたいですね。