ワード解説「武器等防護」 自衛隊がオーストラリア軍を守る! 実際どういうもの?
武器等防護にも制約アリ どんな場合に防護を実施できる?
「外国軍等の武器等防護」には、上記の防護対象に関する制約以外に、防護を実施できる場合に関する制約も存在します。
まず、そもそも外国軍に対して武器等防護に基づく「警護」を実施できるのは、その相手国から警護の要請を受け、かつ防衛大臣が必要と認める場合に限られます。また、武器使用についても、先ほど説明した「95条に基づく武器等防護」に関する制約に加えて、攻撃をしてきている相手方がテロリストや不審船といった、どこかの国の軍隊以外である場合にのみ武器を使用することができるという制約が付されています。
なぜこのような制約が付されているかというと、もしどこかの国の軍隊が意図的に警護対象の国の軍隊の武器等を攻撃したとなると、それはその国に対する武力攻撃に該当し、これを防護するためには「武器等防護」ではなく「集団的自衛権の行使」が必要となるためです。
集団的自衛権の行使となると、これは自衛隊法第76条の「防衛出動」と、同じく第88条の「防衛出動時の武力行使」という規定に基づいて行動することになるため、「武器等防護」の場合と根拠法が全く異なります。そのため、武器等防護で実際に警護を実施できるのは、基本的にはテロリストなどによる攻撃に対する場合に限られるというわけです。
ただし、たとえば奇襲的に攻撃されて、誰が攻撃してきたのか判然としない場合や、相手がたとえどこかの国の軍用機などであっても、その攻撃が意図的かどうか判明しない場合には、例外的に防護を実施できることもあり得るという国会答弁も、過去にはなされています。
2021年現在、日本とオーストラリアとの安全保障面での協力関係は、「特別な戦略的パートナーシップ」と呼ばれるほどに深化しています。また、2020年11月には、将来的なオーストラリア軍の日本での活動増加に備えて、オーストラリア軍の日本国内での扱いなどについて定める「日豪円滑化協定」が大筋合意に至るなど、その関係はより一層強固なものになりつつあります。今回の「武器等防護」も、こうした日豪間の安全保障協力関係のより一層の深化を象徴するできごとといえるでしょう。
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Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)
軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。
共同訓練での武器等防護って実際には何をしてるんですか?