絵空事でなく実在した「原子力飛行機」計画 あまりにも強すぎる強みと案の定のオチ
福島第一原子力発電所事故などからも、その是非が問われている原子力。かつては「夢のエネルギー」と考えられており、それは航空業界でも同じでした。原子力で飛行機を飛ばそうという取り組み、その紆余曲折を見ていきます。
原子力ならもう「ほぼ無限に飛べる」
2021年現在、日本では福島第一原子力発電所事故などの教訓もあり、「原子力」は高エネルギーながら高リスクなものと捉えられています。ただ、かつては電力をはじめ、「夢のエネルギー」として考えられ、さまざまなものへの実用化がトライされてきました。
実は航空もこの分野のひとつです。いまとなっては全く信じがたいハナシではありますが、1950年代には、原子力を飛行機のエンジンに搭載し、動力とする実験が実際に始まりました。そのなかには、実際に原子炉を積んで飛んだ機まであるのです。
航空機大国アメリカで最も計画が進んでいたのは、アメリカの「X-6」でしょう。アメリカ空軍がコンベア社に発注したこの計画には、アメリカ航空諮問委員会のほか、原子力委員会、そして原子炉も手がけるゼネラル・エレクトリックも加わっていました。
原子力飛行機は、搭載する燃料が少量で済み、熱効率も通常の燃料とは比べ物にならないほど高く、空気が無くても燃焼できます。つまり、極端に言えば原子力ターボジェット・エンジンを搭載した場合、ひとたび離陸してしまえばほとんど無限に近いレベルでの航行が可能です。
その一方、安全性が最大の課題でした。具体的には、放射性物質の漏洩をどのように防ぐか――ということです。そのためにはエンジン区画を他のエリアから隔離しなければならず、結局はそのぶん、重量が増加してしまいます。また、軍用機として実用化した場合には、被弾などによって損傷する可能性もあることから、破損した部分から放射性物質が漏れる可能性をいかに防ぐかが課題となります。
X-6計画では、すぐにイチから設計をし直した新造機をつくるといったものではなく、当時最大の飛行機であった戦略爆撃機「B-36」に原子力エンジンを搭載してみようという試みからスタートしまでした。
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