旅客機で世界初「手を触れずに出られるトイレのドア」どう実現? ANAに聞く挑戦の裏側

実は大変!? 「手を触れずに出られるトイレ」が当局お墨付きをもらうまで

――手を触れずに出られるトイレのドアが実機で採用されるまで、どのような経緯があったのでしょうか?

 まずはジャムコさんに依頼し、試作品を7つほどつくりました。普段の生活でひじなどを使ってドアを開けることはなかなかないので、『ひじを使ってハンドルを引く』ことをお客様にご理解いただけるデザインを考えるのに試行錯誤を重ねました。実は当初考えられたドアのハンドルは、ただの板のようなものだったのです。ただ、ジャムコさんでの検証結果では、それでは押してしまうことが多いという結果となりました。次は、丸いつり革のようなデザインにしてみると、握ってしまうという結果になりました。このような試行錯誤の結果、現在のようなデザインに落ち着いたのち、ANAラウンジで検証し、お客様からの意見を集めることになったのです。

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ANA整備センター技術部 客室技術チームの渋谷英史さん(2021年7月、乗りものニュース編集部撮影)。

――ラウンジでの検証後、機内への実装に向けた段階で、苦労したポイントなどはありましたか?

 ハンドルのデザインは、12月に最終確定しました。ただ、航空機に装着する部品には、技術的に厳格な要件があります。たとえば耐火性や強度などが、日本の航空局やFAA(アメリカ連邦航空局)、機体製造メーカーの求める基準をクリアしなければならないのです。耐火性についてはこれまで使用実績のある素材を使うことでクリアできましたが、強度の面をクリアするのには、苦労しました。このハンドルは、発想自体が世界的にも初めてなので、もちろん、誰もやったことがありませんでした。

――ハンドルの強度は、どのような基準が必要となるのでしょうか?

 たとえば、強度の試験のひとつに過重をかける『アビューズロードテスト』というものがあります。ここでは、押す、引く、上下とそれぞれの方向に負荷をかけるのです。上下方向の基準は比較的容易にクリアできた一方で、押す、引く方向の基準をクリアするのにかなり苦労しました。最終的にハンドルのベースとつなぐ部分を強化することで解決しました。

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