旅客機で世界初「手を触れずに出られるトイレのドア」どう実現? ANAに聞く挑戦の裏側
当たり前になる? 「手を触れずに出られるトイレ」
――「手を触れずに出られるトイレのドア」のハンドルのデザインが固まって、搭載初号機(ボーイング787-8。JA817A)が2021年4月30日にデビューしました。スケジュール感としてはどうだったのでしょうか?
通常こういった改修は、設計完了から承認を得て実装されるまでに、最低でも1年弱の時間がかかります。今回は4か月で実現したので、非常に短い期間で実装まで進めたと思います。なにせ新型コロナの衛生向上策なので、スピード感が非常に大切と考えていました。当初はゴールデンウイーク後の実装を目指していましたが、前倒しで路線に投入できました。
――今後はこのドアの実装をどの程度、進めるのでしょうか?
今年度末までに、国内線用のボーイング787全機に実装を進めます。今後は国際線用のボーイング787や、777-300ERへの導入も検討している状況です。ただお客様の衛生・清潔を求めるニーズは、コロナが収まったあとも変わらないのではと思います。具体的な目途は立ってはいませんが、ゆくゆくはこういったアイテムの実装がスタンダードになるのかもしれません。
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なお、渋谷さんによると、このトイレのドアをハンドル付きのものに変える作業には、「接着剤が完全に乾くまでの時間を含めると、1機あたり2日ほど」かかるそう。とくに、取り付けたハンドルの隙間に詰め物をして埋める仕上げ工程の「シーラント」作業は、「綺麗に仕上げるのには、結構時間がかかります」とのことです。
ただ、丁寧にシーラントをするのは「ANAの客室整備士のプライド、マインド」とも。「そこまで丁寧にやってもお客様には気づかれないかもしれませんし、ハンドルの強度が変わるわけではありません。ただANAの客室整備士は、だれがやっても、同じように仕上げると思います」と渋谷さんは話しました。
【了】
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