ジェット機版「オスプレイ」実在!? 2機だけ造られた「音速超え転換航空機」VJ-101の顛末

ドイツの「VJ-101」どんな機体だったの?

「ジェット機版オスプレイ」ともいえるドイツの「VJ-101」は、どういった経緯を経て、開発されたのでしょうか。

 VJ-101は、ドイツのEWR社という、多くの人にとってはまったく聞きなれない航空機メーカーにより開発されました。それもそのはずで、この会社は、第2次世界大戦中に軍用機などを製造していたハインケル社とメッサーシュミット社などが中心となって1959(昭和34)年に設立され、北大西洋条約機構(NATO)の近距離支援戦闘機プロジェクトに基づいた、超音速を出せるVTOL機を開発することを目的としていました。逆に言えば、まったく実現するかどうか未知数のVTOL機の開発は、一社だけでは費用を捻出できなかった、ということなのかもしれません。

 VJ-101の試作機は、1963(昭和38)年に初号機が初のホバリング飛行を実施し、その数か月後には、上空でエンジンの方向を変える水平飛行モードへの転換飛行に成功します。翌年には、VTOL機としては初めて、音速を超えるという快挙を成し遂げましたが、その直後に事故を起こしてしまいました。テストはアフターバーナー(エンジンの排気に燃料を噴射することでより高推力を獲得し、飛行速度の大幅な向上を図る機構)を搭載した2号機に引き継がれ、試験が行われていたものの、最終的には1968(昭和43)年に開発中止となりました。

 最終的にVJ-101は、エンジンの角度を変える「ティルト」のところが、実用化への最も大きなハードルだったとも考えられます。コンバーティ・プレーンのティルトは、大きく重いエンジンと推力発生装置を回転させる必要があるため、大きなトルクが付け根にかかりそうです。その後開発された「オスプレイ」でさえ、開発から配備まで20年程度の時間がかかっています。

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千葉県の木更津駐屯地に暫定配備されている陸上自衛隊のV-22「オスプレイ」(画像:陸上自衛隊)。

 ちなみに、VJ-101の実機はドイツ博物館で実物を保存、展示してあります。とてもスタイリッシュでロマンのある機体ですので、コロナが収まったらドイツ旅行を……と考えている方は、ぜひ見学することをおすすめしたいです。

【了】
※一部修正しました(7月13日10時26分)。

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コメント

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1件のコメント

  1. そう言えばエヴァにこんなんあったな?