一般ボランティア受け入れ不可なぜ? 熱海 土石流被害の今 不安解消する県の秘策とは

精度の高い土石流情報を静岡県が手にしている心強さ

 7月8日(水)、赤羽一嘉国土交通大臣の被災地視察に同行した難波喬司静岡県副知事が携えていたのは、3次元点群データに基づく被災地の地形差分図でした。

「今、確実に言えるのは、2020年1月と2021年7月5日のデータで地形を比較すると、(崩落が始まった場所では)5万5500立米(立方メートル)減っている。(その下にある)砂防ダムでは7500立米増えている。その差の4万500立米が下流域に落ちたと考えられる」(難波副知事)

 巨大地震などの災害に備えて、静岡県は3次元点群データの取得を積極的に進めてきました。

「静岡県は20×20cm四方の点に緯度・経度・標高のデータがとってあって、地形はその3次元の点をブロック状に重ねて表すことができる。過去と現在の差分をとれば、地形がどうなっているか、すぐにわかる」(同前)

 地形や構造物を立体的に把握する3次元点群データは、自動運転に欠かせないダイナミックマップ(高精度3次元地図データ)に応用でき、県はその取り組みも進めていました。蓄積されたデータ量は全国一。誰でも利用できるようにオープン・データ化されているほか、県交通基盤部は伊豆半島の3次元点群データをYouTubeでも公開しています(「VIRTUAL SHIZUOKA ~3次元点群データでめぐる伊豆半島~」)。

 こうしたデータの検証をしながら、災害復旧は進んでいます。

「規模が大きいので、残っている土砂が落ちて、再度の災害にならないよう抑えることが大事。今のところ大規模崩壊するように見えないが、累積400mmという雨が降った場合にどうなるかわからないので、解析をやらないといけない」(同前)

 さらに静岡県は2009(平成21)年以前の地形を推定するために、2005(平成17)年から現在までの写真や映像などの情報提供を県ホームページのメールで求めて、崩落原因の究明に役立てようとしています。

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3次元点群データによる地形差分図で土石流の流量を説明する難波副知事。5万5000立米の土石流が流れ、7500立米は砂防ダムに留まったとの推定(中島みなみ撮影)。

 依然として災害の危険が去ったわけではありませんが、市内全域が心配なわけでもありません。

 熱海市の齊藤 栄市長は「特に夏の観光シーズンで経済が成り立っているので、経済が止まらないよう丁寧な情報発信を心がけていきたい」と話しています。

 熱海が気になる人は、被災以外の面にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

【了】

【現地の高台から撮影】熱海の住宅街を襲った土石流の様子

Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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コメント

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2件のコメント

  1. 副知事が以前勉強していてこういう話に詳しいってのは、
    なんだか凄く頼もしいね。

  2. 難波副知事が土木工学を専攻していたことはかなりプラスになりそうですね
    発言力のある人がきちんとした知識で情報を発信してくれるのはありがたいのではないでしょうか