パイロット「ワタシ、誘導路で迷子に…」実はあります! どんなときになるのか? 対策は?
プロのパイロットが迷子になるケースとは
成田空港や羽田空港の俯瞰図や航空写真をみると一目瞭然ですが、大きな空港では、誘導路の本数も多く、形状が複雑です。これにともなって、滑走路と誘導路の名前と方向が表示された案内標識や路面標示も無数に存在します。そうなるとその空港の景色に慣れていないパイロットから見ると、「どっちがA誘導路でどっちがB誘導路か、判別が付かない」ことも。
地上走行時において、航空管制官は「Taxi via A, B, B1(A誘導路、B誘導路、B1誘導路経由で地上走行せよ)」と定型の指示用語を使用するのが原則です。
ただこれはパイロットの目線から見ると、右折なのか左折なのか、何本目の交差点を曲がればいいのかなど、カーナビのようなきめ細かい指示がタイミングよく出されるようなこともなく、目的の駐機場や滑走路までたどり着かなければならない――ということになります。
先述した“迷子”ケースが発生した結果生じるトラブルとしては、航空管制官が指示した誘導路と違う誘導路に入る「誘導路誤進入」があげられるでしょう。国土交通省が毎年発表する「空港の安全に関わる情報」によると、令和元年度は無許可・誤進入の報告が27件あり、うち19件が誘導路で生じています。報告に上がっていない軽微なものも含めれば、類似事例は年間で100件以上発生しているでしょう。特にこういったトラブルは大空港で、とりわけ視界の悪い夜間帯に発生しやすい傾向にあります。
件数は多いとはいえ、上空や滑走路上とは異なり、道に迷っても止まればぶつかることはありませんので、安全運航は担保されています。ちなみに、航空管制官はあらかじめ間違えやすい場所、飛行機が集中する場所を把握しており、誤進入や突然停止することも計算に入れ、もしそうなっても影響を最小限にする第二の手を用意の上で、それぞれの飛行機に指示を出しています。また、そのようなケースを重点的に監視することでトラブルの先読みを欠かしません。
“迷子”となってしまった当該便は、当初予定していた時間より遅延することもありますが、これは、なによりも当該機、そしてその周辺の便に乗るすべての乗客と乗員の安全を最優先とした結果ともいうことができるでしょう。
【了】
※一部修正しました(7月15日9時02分)。
Writer: タワーマン(元航空管制官)
元航空管制官。航空専門家。管制官時代は成田国際空港で業務に従事する。退職後は航空系ライター兼ゲーム実況YouTuberに。飛行機の知識ゼロから管制塔で奮闘して得た経験をもとに、「空の世界」をわかりやすく発信し続けている。新書「航空管制 知られざる最前線」(2024/5/28河出書房新社)
全くの部外者なので、大空港ではてっきり乗務員室にプレーンナビゲーション?のような画面があってマップは常にアップデートされててそれに従えばよくなってるのかとぼんやり思っていました。