「水を守れ」鉄道高架化で浮上した地域の死活問題どう解決 20年要した阪神本線の踏切解消

「開かずの踏切」解消へ向け、鉄道会社や行政、地元住民が長い時間をかけ立体交差化を目指す例は各地で見られます。とりわけ兵庫県西宮市を通る阪神本線では、酒造に欠かせない大切な「宮水」を巡り、丁寧に工事が進められてきました。

「宮水」を大切にしながら進められた高架化

 西宮の水は業界関係者から評判で、「西宮の水」が略されて「宮水」とも呼ばれます。同地には現在も多くの酒造メーカーが工場や蔵を構え、宮水を大事に守りながら酒造りをしています。もし宮水が汚染されてしまえば、酒造りの伝統が途絶えるだけでなく、主要産業であるために市の経済や雇用にもダメージを与えるでしょう。

 西宮駅周辺の立体交差化工事は、兵庫県・西宮市・阪神電鉄の3者によって1980(昭和55)年に着工されました。工事を開始するにあたり、宮水の水量や水質に異常がないかを確認する機関として、酒造関係者や有識者による宮水保存調査会が組織されています。工区は3つに分けられ、同会による細かなチェックを受けながら工事は少しずつ進められました。

 例えば高架橋の基礎には、地下水を通すためにスリットのある杭が使用されたほど。こうした経緯により、同区間の立体交差化は完了までに20年以上もの歳月を費やすことになったのです。

 完了した翌年2002(平成14)年にも、宮水保存調査会によって水のチェックが実施されていますが、ここで「異常なし」と報告書が提出されたことで、西宮駅周辺の立体交差化は無事に事業終了となりました。

【了】

【地上西宮駅を偲ぶ…?】現地に残るお役御免になった踏切警報機

Writer:

フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。

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コメント

2件のコメント

  1. リニア新幹線の工事とは180°違いますね

  2. なるほど、と思う記事で好感を持って拝読しましたが、一方で、阪神高速道路神戸線の高架道路がほぼ隣接平行して掛かっています。こちらの方が道路幅や橋脚は大きく、橋脚支持杭も大きく深かったと思います。1980年の頃には開通していたと思いますが、その時はこの様な問題は起きなかったのでしょうか。

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