アメリカUFO報告書 読み込んだら何が見えた? 9ページ約1万5000字の要点を解説!

軍の訓練施設や実験場でUFOが頻繁に目撃される理由

 UFOといえば、軍の施設や兵器の実験場上空で頻繁に目撃されるというのが、ひとつの定番の設定になっていますが、この点について、報告書では次のように説明しています。

「UAPの目撃情報は、アメリカの訓練・試験場周辺に集中する傾向があるが、しかしこれは、注目度の高さ、最新世代のセンサーの数の多さ、(何らかの事態に遭遇するかもしれないという)部隊側の期待、そして異常を報告するようにという指導の結果、情報の収集にバイアスがかかっているためではないかと評価している」

 つまり、兵器の試験や実験が行われる場所では、兵器の観測および周辺を警戒する目的で多数の高性能センサーが配置されており、さらにそれに参加する部隊も、何か異常があればそれを報告するようにという指導を受けているため、結果としてほかの地域よりもUAPの目撃頻度が多いだけではないか、ということです。

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米海軍航空システムコマンドの公式ページで公開されている動画のひとつ「GIMBAL」より。「何か」が雲海の上を移動しているように見える(画像:アメリカ海軍)。

なぜアメリカはUFO問題に真剣に取り組んでいる?

 これまで、UFOはアメリカを含め世界中で話題になってきました。しかし、なぜいまになってアメリカ政府はこの問題に真剣に取り組むようになったのでしょうか。その理由は、この問題が場合によっては国家の安全保障に直結するからです。

 報告書では、考えられるUAPの正体として「(1)家庭用ドローンやビニール袋などのクラッター(不要な電波や光の反射源)、(2)自然現象、(3)アメリカ軍やアメリカ企業の試作品、(4)外国の先進的なシステム、(5)その他」というものを挙げています。

 この中で問題となるのは(4)で、もしUAPの正体が中国やロシアといったアメリカ以外の国が作り出したものであるとすれば、アメリカでは開発されていない未知の技術を用いた最新兵器という可能性も十分考えられます。もしそうであれば、これはアメリカの安全保障にとって深刻な脅威となり、そのためアメリカ政府はUAPに関する情報を収集し、その正体を確かめようとしているのです。

 とはいっても、UAPの正体が地球外生命体の作り出した物体という可能性は未だ残されています。先ほど触れたUAPの正体に関する5つの可能性においても、(5)の「その他」に「宇宙人の乗りもの説」を含めることは可能ですし、なにより報告書では宇宙人の存在や関与を否定する文言は一切、登場していないのです。

 つまり、宇宙人が存在する可能性は、むしろ高まってきているともいえるかもしれません。

【了】

【画像】米海軍撮影 公式に正体不明とされている「何か」

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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