アフガニスタン脱出 邦人保護に自衛隊なぜ派遣できない? 米軍展開の根拠と比較

日本政府はなぜアフガニスタンに自衛隊を派遣できなかったの?

 それではなぜ今回、日本政府はこれらの根拠に基づいて自衛隊をアフガニスタンに派遣することができなかったのでしょうか。

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「コブラゴールド2019」にてNEOの訓練に参加する陸上自衛隊の中央即応連隊の動画より、「任務遂行型武器使用」を実施中の様子(画像:アメリカ陸軍)。

 まず、タリバンの急速な勢力拡大にともなって、自衛隊機の運航に関する安全が確保できるかが不明瞭であったことから、仮に自衛隊を派遣するとなれば、その根拠は在外邦人等の保護措置であったと考えられます。そうなると、問題はこれを実施する際の要件を満たすことができるかどうかという点です。

 保護措置の実施に際しては、(1)当該地域の安全を現地の当局が確保し、戦闘行為が行われることが無いこと(2)武器使用を含む自衛隊の活動について領域国が同意していること(3)当局との連携が見込まれること、という3つの要件を満たすことが求められています。しかし、現状ではアフガニスタン政府が事実上、崩壊してしまったことから、現地の治安当局がカブール空港の安全を確保しているとはいえませんし、当然、自衛隊との連携も見込めません。さらに、これに加えて自衛隊の展開には現地政府の同意が必要になりますが、その政府が存在しているとはいいがたい状況では、たとえ外務大臣からの要請があったと仮定しても、そもそも自衛隊の派遣を行うことができなかったのではないかと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。

【アフガニスタンを脱出する輸送機の機内の様子】

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