アフガニスタン脱出 邦人保護に自衛隊なぜ派遣できない? 米軍展開の根拠と比較

アメリカ軍の場合はどうなっているの?

 ちなみに、アメリカ軍では先述したNEOの実施に関して、領域国の態度が(1)許容的 (2)敵対的または非許容的(3)不明瞭という3つの分類を設けています。このうち、(2)と(3)の場合はアメリカ軍がNEOを実施することに関して領域国の同意が得られていません。そのため、NEOを実施するとなると他国領域に無断で軍隊を派遣することになり、国連憲章第2条4項に規定された武力の不行使に関する規定との抵触が問題になります。

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アフガニスタンからの退避を支援するため、C-17輸送機によりアフガニスタンのカブール国際空港に向かうアメリカ海兵隊の第24海兵遠征部隊(画像:アメリカ中央軍)。

 そのため、こうした場合にNEOを実施するための国際法上の根拠として、先述した作戦法規便覧では(1)国連憲章制定以前の実例などから、自国民保護に関する慣習国際法が存在している(2)領域国による保護が期待できない場合、限定的な期間および目的で実施されるNEOは国連憲章2条4項で禁じられている武力の行使にはあたらない(3)安保理決議がある場合、または自衛権の行使にあたる場合のNEOは許容される、という3つの根拠を提示しています。

 今回、現地に所在していた日本人のうち、大使館職員はイギリス軍機により無事アフガニスタンから退避することができており、そのほかの日本人についても国外待避の手段が講じられているとのことです。また、現在のところ日本政府が自衛隊を派遣するという状況は生起していません。

 ところが、8月20日(金)になって、アメリカ政府がアフガニスタンにいる民間人の国外退避を支援するため、日本政府に対して自衛隊の派遣を含む協力を要請していることが明らかになりました。

 仮に、自衛隊の派遣を日本政府が決断した場合には、現状ではそれに対応するための法的根拠となる規定が自衛隊法などに存在していないことから、どのようにこの問題をクリアするのかが注目されます。

【了】

【アフガニスタンを脱出する輸送機の機内の様子】

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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