高架化した線路跡は誰の土地? 税金投入の“活用ルール”とは 見直されるその価値

保育所だけじゃない最近の活用例

 都市施設帯は立体交差化で生まれた空間ではありませんが、これが空間を有効活用する糸口になります。保育所は往々にして、園児たちの遊び声がうるさいといった苦情が寄せられ、住宅地に開設することが難しい面がありました。しかし、高架下なら鉄道の騒音の方が大きく、結果として園児の声はかき消されました。

 高架下を保育所として有効活用できること分かり、保育所の開設は、先述の「15%ルール」の対象とされました。持て余されていた空間は新たな可能性を切り開かれたわけですが、保育所は振動が伝わりにくいように建物の構造が工夫され、騒音をシャットアウトできるよう二重窓が採用されるなどの対策も講じられました。

 ところで、保育所は明らかに公共施設といえますが、近年は「15%ルール」の活用バリエーションも増えつつあります。例えば、スタートアップを支援するためのスモールオフィス、地場産業を支援するためのクラフト工房、斎場、アートギャラリーなど。これまでに見られなかった施設が登場しているのです。これらも公共利用という目的を含んでいます。

「15%ルール」に基づく空間活用は、まだ緒に就いたばかりです。今後、さらに新しい活用方法が模索されていくことでしょう。

【了】

【変身、資材置き場】高架下の“今っぽい”活用例とは

Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)

フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。

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